(※もうこのまま番外編オンリーでいいかなとか、
　 最近思ってたりします。
　 本編のプロットはなかった事になったのだ……
　 本編ェ……
　 後、卯月美白なのに真白ってずっと言ってますが、
　 真っ白っていって真白のほうがいいわねと思って、
　 さりげなくすり替えてる設定です。はい。背後のミスです)

「ただいま。」
――ただいまなんて言ったのは、
どれほど久しぶりだろう。
というよりも、
日が沈むよりも早く家に帰る事自体久しぶりの気がする。
どうせ親と顔を合わせても喧嘩しかしない……
という訳ではないが、
精一杯の反抗のあらわれの一つという奴だ。
良い子ではなく、
悪い子に。
あたいが不良である理由なんてそんなもの。
だが――
そうやって反発していられない事だってある。
だから――
家で家事をしている母の元へいききく。
「――なあ。親父何時帰ってくるんだ？
　どうしても話したい事があるんだけど。」
率直に、ストレートに。
飾ったってしょうがない。
「――今日は早いって言ってたよ。
　もっとも、何か事件が飛び込んだら分からないけど。
　それにしても珍しいわね。
　あんたがあの人に会いたいだ゛なんて。
　何年ぶりかしら。
　お互い顔もみたくないだなんて喧嘩してたのに。」
「……あたい一人じゃ出来ない事だってある。
　それを痛感しただけ。
　……いつも仕事が忙しくて、
　約束してもいつも破られて……
　それなのにいつもあたいはおこられてばかり。
　でも、今なら……受け入れられるとはいわないけど、
　それでも……
　今のあたいの悩みの力になってくれるというか、
　力になってくれそうな相手は親父しかいない。
　それだけ。」
「……そう。
　それじゃ、あの人が帰ってきたら
　睦美が話があるっていってたって席を外すわね。
　母さんもあんたが何を聞きたくて、
　あの人とどんな話をするのか気になるけど、
　私じゃなくてあの人を選んだという事は、
　あまり聞いてよさそうな話じゃないもの。
　……喧嘩しないようにねとはいわないけど、
　カッとせず我慢して最後まで話は聞きなさい。
　それが本当に大切な事なら。」
「……分かった。
　ありがとう。」
頭を下げて自分の部屋に戻る。
あんまりずっと顔を合わせていても、
正直気まずいというか、
気恥ずかしいだけだし。
――しばらくして、親父が帰ってくる。
まだ日が沈む前に帰ってきたあたり、
ひょっとしたら、
母から何か連絡をしたのかもしれない。
急いで部屋を出て親父の方へと行き――
「話がある。というか、
　お願いがある。
　二人で話したい。」
率直に話を切り出す。
「……別にここでもいいだろう。
　それにお願いの割には――」
「……頼む。」
嫌々、ではあったけど、
頭を下げてお願いする。
何かあたいが対価を出せるわけでも、
それ以上何か出来るわけでもない。
それに、きっちり頭を下げれば、
それが真っ当でないお願いならともかく、
これくらいの願いなら受け入れる。
「分かった。
　……じゃあ私の部屋で話を聞こうか。」
疲れているんだがな、
といいたげながらも、
自分の書斎へとあたいを招き入れる。
「きっちり鍵はしておけよ。
　で、話とはなんだ。
　家を出たいとかそんな話なら受け入れんぞ。
　今のお前は一人でどこかにやるわけにはいかん。
　どうせ誰かの迷惑になるか、
　騙されるかでろくな結果にはならん。」
「そんな事じゃねぇよ。」
入って早々、
そんな事を言う辺り、
釘刺しが上手いというか、
先手をうってくる。
まぁ、実際問題、
あたいが親父とこうして向き合う次の機会は、
そんな話だと思ってたからあながち間違いでもないが……
「む？」
だからこそ、違うといわれて、
親父は困惑したような表情を出す。
いつも親父の掌の上だったけれど、
今回ばかりは流石に読む事などできなかったようで、
その表情にすっとした。
「……ただ、ちょっと面倒な話だから、
　最後まで付き合ってほしい。
　馬鹿馬鹿しいとか言われても困るし。
　後、何から話せば良いのか、
　ちょっと整理するからまってほしい。」
「……分かった。
　最初から整理しておけとは思うが、
　仕方ないだろう。」
ぐぅの音も出ないほどの正論で、
ムカッとはしたが、
しかし、これから話す出来事は、
正直手に余るというか、
普通なら頭がおかしいといわれても仕方がない。
たとえ相手が親だとしても。
だからこそ、どこから何から話すかが大切なのだが、
正直思いつかない。
だから、仕方ないかと苦笑する。
こういう時魅月だったらどう話すだろうか。
きっとあたいより上手く話を聞くだろう。
例えば……ああ、そうか。
「――親父、警察でさ。
　理解が及ばない事件、
　ありえない事件が起こった時だけ出張る部署、
　もしくはそれに類する組織とかってないか？
　そこが出張ったなら、
　その事件には連絡がない限り一切手を触れてはならない……
　みたいな……さ。」
「……そんな警察の事情をぺらぺらといえんな。
　たとえ家族であろうと、
　守秘義務というものはある。
　それが今回の話と何かかかわりがあるのか？」
「多分、あると思う。
　だって、さ。
　あるって前提でいうけど……
　それって、
　心霊がらみの事件なんだろう？
　ありえないとは思うけど、
　現実としてありえるどうしても隠さないといけない事件。」
「……」
「沈黙は肯定ととるぞ、親父？」
「……馬鹿馬鹿しい。」
「呆れたからワンテンポ遅れたなんていうなよ、
　呆れた顔ではなく、
　刑事の顔してたぜ親父。
　あんたがそういう顔する時は、図星をつかれた時だ。」
「……」
「……」
じっとお互い相手の瞳を真っ直ぐ見る。
わが父ながら凄い威圧感だが引くわけにはいかない。
喧嘩で大切なのは、引かない事。
ここで引いたら喧嘩に負ける。
喧嘩に負けるという事は……
この場合、あたいのお願いしたい事をお願い出来ない、
完全にあしらわれてその道を断ってしまう。
二度はない。
一度きりの勝負だ。
ここで勝てなきゃ親父には二度と勝てない。
沈黙が流れる。
だが、やがて親父の方が根負けした……
というよりは、
こちらの覚悟をみて譲歩したのだろう。
大きくため息をついて――
「……ある。
　とはいえ詳しく話す事は出来んぞ。
　いえるのはあるという事だけだ。
　しかし、
　どうしてまたそんな事を……」
「……幽霊の友達が出来たからな。」
「……冗談か、冗談でなければ病院に行こう、
　と片付けるのは容易いが、
　最初に警察でそういう部署があるか聞いたという事は、
　なるほど、最初に退路を断った、か。
　成長した事を喜ぶべきなのか、
　それとも――」
「別に成長した訳じゃないさ。
　後輩に二人友達が出来て、
　そのうちの一人ならどう考えて、
　どう話すだろうって思ったら出てきただけ。
　あたいの力じゃないよ。
　……その友達ならもっと上手くやってたと思うし。」
「……ふむ。
　友達か。
　一人を決め込んでいたお前が、な。
　その幽霊の友達も含めてどんな友達か、
　もっと詳しく聞いてみたくはあるが……
　その前にお願いか？
　言ってみるといい。
　本題はここからだろう？
　その幽霊の友達にまつわる話ではあるだろうが。」
そう、本題はここから。
でも、
幽霊の友達である真白に関することではないし、
友達の話もしないとお願いを言うわけにはいかない。
難儀すぎる。
だが――ここまでくれば話は早い。
親父が思ったよりもやさしい対応をしてくれたのも助かった。
「いや、友達の話からするよ。
　こちらがお願いする立場だし、
　友達にかかわる話だからね。
　まずは幽霊の卯月真白だけど、
　いつもあたいがいく桜の木についている霊で、
　別に害はないっていうか友好的でかわいい子、
　で、後輩は二人とも今年の新入生なんだけど、
　片方は佐々木咲良っていって今年の新入生代表代理を務めた子。
　かわいくて頭が良くて、
　なんていうか……
　皆に好かれる子っていうのはこういう子をいうんだろうね。
　それでもう一人が……」
さて、ここから本題なのだけど……
どうしたものか。
どこまでいってどういえばいいのか。
百聞は一見にしかずっていうけど、
言葉でいいあらわせないから、
実際にあって判断してくれといわんばかりの魅月を、
どう紹介すればいいんだ。
「……もう一人が……
　どうかしたのか？
　ものすごく渋い顔をしているぞ？
　言いにくいなら無理にとは……」
流石に悩ましげにしてるあたいを気遣う親父。
といわれても、
ここをどうにかしない事には話が進まない。
「ん。いや、ちょっとどういえばいいのか困っただけだよ。
　なんていうか、表現に困るほどの曲者でね。
　頭は良くて美人だけど、
　性格が超がつくほどの曲者。
　この辺りはあってもらった方が早いから、
　真白は無理だけど二人は連れてくるよ。
　で、名前は伊賦夜魅月。」
「……む？」
「ん？どうしたんだ親父？」
魅月の名前を出したとたん、
妙な表情を浮かべる親父。
何か知ってるのかと興味が引かれた。
仕事の関係か、
それとも、過去にあっているのかは分からないけれど、
何か関わりがあるに違いない。
「いや、昔、
　友人が好きな人物の名前がそうだったなと思い出してな。
　まぁ、偶然の一致って事もあるだろうから、
　気にしないでくれ。」
ほら、案の定。
とはいっても、直接的な係わり合いがあるわけでもないから、
これ以上踏み込まないほうがいいだろう。
うん。
「そ。
　ま、いいんだけどさ。
　まぁ、で、
　魅月とこのまま学校卒業までの付き合いなら、
　別に気にしなくてもいいんだけど、
　あたいも、
　そして……咲良も相談して決めたんだけど、
　彼女と付き合って行きたいって思ってる。
　その為には……
　その心霊にかかわれる所へいかなきゃならない。
　どうすればいいか教えてほしい。
　――親父、どうかお願いできないかい？
　その為なら、出来る限りのことはしたいと思ってるんだ。
　我ながら馬鹿な話と思ってるけど、さ。」
「まさか――」
「うん、
　彼女もそっちにかかわる人間みたいだからね。
　必然的に彼女の知り合いであるあたいなら、
　彼女にかかわれる所に携われると思うんだ。
　とはいっても、
　いろんな意味で鍛える必要はあるだろうけど。
　……手は抜かない。」
「……」
あたいのお願いに、
親父は目を瞑って考え始めた。
一体何を考え、
どんな答えを出すのか怖いが、
待たないといけない。
あたいはお願いする立場なのだから。
「……」
じっと親父を見る。
しかし、
こんなに真剣に考える親父、
しかもあたいの事となると初めてかもしれない。
怒ったり怒鳴り散らしたりはあるが、
真剣に悩んでいる姿は初めてだ。
「――睦美。」
「……はい。」
「気持ちは分かった。
　なら……
　三つ約束してもらおう。」
「……三つ？」
「一つ。成績を上位とまではいわん。
　半数を上回って見せろ。
　最底辺のままでは駄目だ。
　二つ。時間がある時にお前を鍛えなおす。
　嫌といわず、しっかり鍛錬に付き合ってもらおうか。
　無論、こちらの言う事を守ってもらうぞ。
　そして、三つ目。
　――暴力をもちいるな。
　ただし、弱い者を助ける時、
　自衛の必要がある場合は遠慮はいらん。
　どうせ上手な立ち回りが出来るほど器用ではないのは知っている。
　良いな。
　それでも対処できない事があれば、
　友達に頼れ。
　友達が駄目なら親に頼れ。
　嫌かもしれんがな。
　自分一人で出来る事などたかが知れている。
　必要があれば遠慮はするな、
　そして、恥と思うな。
　いいな？約束できるか？」
「……分かった。
　約束するよ。」
「ついでに言葉遣いもたたきなおしてやる。
　そのままでもお前らしくていいかもしれんが、
　なおせる所はなおしておいたほうがいいだろうしな。」
「ちょ、待て、親父。
　それはありがた迷惑……」
「黙れ。
　拒否権はない。
　その代わりお前がお願いしたように、
　そこまでの道は教えてやる。
　後はきっちりついてくれば、
　お前の力でどうにかなる。
　――その上で、その道を本当に進むのか、
　それとも別の道を歩むのかは自由だ。
　脱落するならそれまでだろうが、
　別に攻めたりはせん。
　決して楽な道ではない。
　いいな？」
「……はい。」
親父の真剣な様子に、
あたいは頷いた。
後はあたいの頑張り次第って事か。
「よし、
　それじゃあ、そろそろご飯の時間だから、
　晩御飯を食べて早速訓練するぞ。
　今日の晩御飯は何だろうな……」
厳しいってレベルの道ではなさそうだけど、
今までの怠慢を取り返す所から始めよう。
しっかりご飯を食べて第一歩といこうかね。

魅月さんによじよじのぼのぼ

よじ登る猫の匂い嗅ぎ、尻尾咥えたら引掻かれた。