今回の採用D.o.D.：シェリー(607)　2D6 = 10 　部位 2D6 = 3
※　前回自分でロールを振り忘れていましたが、幸いPLが振ってくれていたのでそちらを自動的に採用します。

-4：全ての支払いを請求される。次回更新時アイヴォリーは死亡する。
-3：いずれかの部位を欠損する。永久に該当ペナルティを2倍量受ける。
-2：いずれかの部位の末端を欠損する。永久に該当ペナルティを受ける。
-1：いずれかの部位を派手に損傷する。適切な処置が施されるまで部位表のペナルティを3倍量受ける。
0：いずれかの部位を損傷する。適切な処置が施されるまで部位表のペナルティを2倍量受ける。
1：いずれかの部位の末端を損傷する。適切な処置が施されるまで部位表のペナルティを受ける。
2：いずれかの部位から出血し続ける。適切な処置が施されるまで部位表のペナルティを受ける。
3：いずれかの部位から派手に出血する。次回更新時、部位表のペナルティを2倍量受ける。
4：いずれかの部位から出血する。次回更新時、部位表のペナルティを受ける。
5：いずれかの部位から多少出血する。実際の影響はない。
6：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。
7：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。
8：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。
9：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。
10：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。

11：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。
12：意志の力で運命を抑え込む。DoDスケールをひとつ押し戻す。

D.o.D.： 2D6 = 8 ( 5 3 ) 　Parts： 2D6 = 9 ( 5 4 )


　“命なき者たちの王”について話し合っていたときに、そのことを告げたのはシェリーだった。彼女は偶然にもそれを討伐し、契約した探索者と知り合いだったから知っていたのだ。

「人間、地獄の門を開けてこの世に彷徨い出てきた亡者どもの王よ、あれは。」

　それは比喩ではなく、実際にそうである、という意味でだ。アイヴォリーの知る“命なき者たちの王”、古い世代の吸血鬼たちや高位の魔術によって無限の命を得た幽鬼の話を否定してそれを告げたのだ。
　ここ、地下牢で現れる“命なき者たちの王”はそういったアンデッドではないということ。別の世界に住み、不安定につながったあちらとこちら、世界の裂け目を通してやってくるものだと。それを聞いてアイヴォリーは顔をしかめた。
　そもそもアイヴォリーが想定し、かつて遭遇した“命なき者たちの王”は、彼が語ったアンデッドたちだった。それはあくまでも、同じ世界の中に存在した──あるいは通常のやり方ではないにしても未だに存在している──相手だ。だが、シェリーが知っている“ここ”の“命なき者たちの王”はそうではないという。アイヴォリー自身も聞いたことはあった。黄泉の世界、要するに死後に魂が行き着く場所のひとつ。そこを統べる王がいるという。地域や文化によって様々ではあるが、彼は永遠の玉座に坐して彼の軍勢を取りまとめている。彼は堕ちてきた魂を審問し裁きにかけることがあるとも、その分身が現世に砂時計と鎌を手に命の終わりを告げに来るとも言われている。何にしても、それは別の世界の住人であり、根本的にこの世界のものではない。宗教によっては分かりやすくそれを悪魔と呼ぶこともあるだろう。死の国の神として崇める者たちもあるかも知れない。時にはその秘された方法を学んだ魔術師によって現世に呼び出され、召喚者に途轍もない力を与えることもある。例えば、アイヴォリーの知る“命なき者たちの王”になる力などを。交渉によって人と取引し、悪辣な代償を得ることもあるだろう。
　何にしても、それは巷で言われている様な“命なき者たちの王”ではない。むしろ“生命を統べる王”、もしくは“魂を統べる王”とでも呼ぶべき代物だった。

「オイオイ、ソイツはちとマズいんじゃねェのか？」

　ちっとも具合の悪くなさそうな口調と表情でアイヴォリーが言う。彼の知る“命なき者たちの王”でも十分に厄介な相手なのだ。だが、別の世界の住人となれば格が違う。それはまさに悪魔であるとか魔神であるとか、そういう範疇に分類される相手だ。単に不死の力を得た人ではない。まさに“格”が違うのだ。それは人間が立ち向かうような相手ではなく、そもそも相対すべき相手でさえない。お互いに自らの世界で接触なくやっていくのが、少なくとも常人にとっては望ましいことであるはずだった。
　この地下牢にそもそもそういった次元の裂け目が存在したのか。ネクターの偏りによって世界の天秤が傾いたせいか。あるいは、以前に地下牢で遭遇した司祭の姿をした男が呼び出したのか。どれもあり得る話で、どれもあってはならない話だった。

「まぁ私にも遺恨が出来たの。逆恨みに近いけれどね。」

　何があったのかは分からない。だが、昨日の様子から一変して彼女は決意に満ちた表情をしている。恐らくはその二つには関連があるのだろう。そうでなければ急にこんなことを言い出したりはしないはずだ。この地下牢はここで行き止まりでありどこかへとつながる道がある訳でもない。アイヴォリーの要望がなければそもそも候補としてさえ挙がらなかった目的地だろう。そして“人間”の自己満足に近いだけの要望に、彼女が自分から前向きになるとは到底思えなかった。

「ヤレヤレ、コイツはちッとばかし面倒そうな相手だな……。」

　今となっては、むしろ言い出したはずのアイヴォリーの方が乗り気ではなさそうに見える。無論、彼としても勝つ見込みがない訳ではない。これまでにも異界から召喚された高位の魔神や悪魔などに相対したことがない訳ではない。狂った王が人を集めた地下迷宮では青白い革の肌と翼を持つ巨大な魔神と戦ったこともある。さらにその上位にあるという熱風を纏った古代の魔王と遭遇したこともあったのだ。その犠牲は決して小さくないものではあったが、確かにその時の彼らはそれを退けた。即ち、人間たちであっても、この世界においては彼らに対して勝ち目がない訳ではなく、やり方によっては十分に渡り合えるということである。無論、それはこの世界の中に限った話であり純粋な優劣ではない。だが、少なくとも向こうからこちらにやってくる状態に限れば、あくまでも自分たちの世界で戦える人間の方が圧倒的に有利なのだ。それほどまでにあちらとこちらでは世界の理が違い過ぎる、ということなのだが。
　何にしても、アイヴォリーにしても十分に勝算はあると考えていた。何しろ、既に突破した連中が何人もいる。彼らから得られる情報から相手の強さは測ることが出来る。向こうからこちらへとやってくる場合、その“門の大きさ”──正確には通過するものをどれだけ正確に再現出来るかという再現性なのだが、通例魔術師たちはそれが通過出来る力量の限界という意味で大きさと呼んでいた──によって相手が発揮出来る能力は極端に制限される。そして何よりも、この世界の“障害”としてそこに現出する以上、それはあくまでも“障害”でしかない。そういった諸々が、此処でならば、勝つことが出来ると示していた。

「まァ……面倒ではあるが勝てねェ相手でもねェな。」

　長い間の後に、表情を崩してアイヴォリーが言葉を継ぐ。

「話はまとまったわね。
　会いに行くわよ、不死の王に。顔を見て、斧の一撃でも食らわせてやるわ。」

　アイヴォリーの言葉に、シェリーは鋭い眼差しでそう宣言したのだった。



　訪れは突然だった。遭遇の報告がある地下牢の最下層でその姿を探して、アイヴォリーたちが玄室のひとつへと踏み込んだその時だった。
　アイヴォリーが持っていた角灯が風もないのに揺らめき、消えた。そもそもその角灯は盗賊たちが暗い場所で錠や罠を解除するために用いる特製の物で、そう簡単に消えたりはしない。それを裏付けるかのように、玄室の壁にかけられた数本の魔力を使った疑似松明も明滅し、そして消えた。

「……来るぞッ！」

　アイヴォリーが小さく声をかける。言われるまでもなく、彼の二人の仲間は既に各々の得物を構え散開していた。
　部屋の中央、暗闇の中でさらに、不自然に蟠った闇。その中に、揺らめくようにして何かの姿が現れる。
　アイヴォリーは闇を見透かしてその姿を見た。人に似た、人を真似て失敗したかのような、歪な人影。アイヴォリーよりも上背があるということはそれなりに大きいということだ。歪んだ腕の先に伸びる爪。闇の中で炎のように揺れる赤い双眸。
　だが、それよりもアイヴォリーには気がかりなことがあった。それはこの“命なき者たちの王”についてではなく、その後のことだった。
　何があったのかは知らないが、エルフの少女はこの相手に少なからず敵意があるらしい。となれば、この後のアイヴォリーの行動を話す訳にはいかないだろう。無論すぐに露見してしまうことだろうが、事前と事後ではアイヴォリー個人にとっては大きな差がある。

まァ、イイカオはされねェだろうな。

　心の中で凡庸な結論に至り、口の端を皮肉に歪めた。当然それは、この暗闇では今の仲間たちにはその表情を見て取られないことを知っているからだ。

ソモソモ、オレはヤレるのか？

　部屋の中央の闇から、獣の唸り声のような、地響きのような、深い音がやってくる。疑問を心の奥底に一旦仕舞い込み、アイヴォリーは跳躍のために身体を沈めた。
　迷うのは後だ。今はこの敵を始末しなければならない。

いつも以上に厳しい表情で何か考え込んでいるようだ。

　　　　　　──人もをし　人も恨めし
　　　　　　　　　　　あぢき　　　なく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世を思ふ故に
　　　　　　　　もの　　　　　　思ふ身　　　は───