今日は、――さんが街に出掛けるということで、
狩猟の訓練は休みだったので、川に行った。
景色がとてもきれいだった。水を眺めていると、すごく楽しい。

森にはたくさんの花が咲いていて、たくさんの葡萄が生っていた。
あとでまとめて採取して、秋に向けてワインにするから
その前にこっそり少しだけ採って、川辺で休みながら食べる。
魚も釣れたので、夕飯が豪勢になるかも。楽しみだ。

――さんが、次の休みには僕を街に連れて行ってくれるらしい。
そうしたら街で色々な珍しい景色、道具、衣装や食べ物や、
ひょっとしたら貴族様も見られるかもしれない、と言っていたけど
僕は、休みの日はこうして森を散策したり川で遊ぶのが一番好きだから
別にわざわざ街まで行かなくていいんじゃないかなと思っている。

でも折角薦めてくれた――さんに悪いから、一度だけ行ってみるのもいいかもしれない。
どんな場所なのか想像がつかないから、少し気になっているし。

魚がもう一尾釣れた。これで夕飯は倍くらい豪勢になる。
いつでもこれくらい上手く行けばいいんだけど……。
もっとずっとここで暮らし続けていたら、狩りも上手くなって、色々釣れるようになって、
平和に生きていけるはずだったんだけどなあ。
どうして僕は間違えたんだろう。
あの時誰の話も聞かなければ良かったのか。

ここは真っ暗だ。

この中で生きてる人間が僕しかいない。

誰も助けになんか来てくれない。

どうしてこんなことになってしまったんだ。

こんなところで死ぬのは嫌だ……
お願いだから出してくれ、帰してくれ……

誰か……

黙って、久しぶりに再会した彼の話を聞いている

そのまま行こうと思ったが、ふと言いたかった事を思い出し

言おうか言うまいかで迷うように躊躇った後、駆け寄って

「…じゃあ後で」という言葉だけを残して
返事も待たずに走り去って行った