今回の採用D.o.D.：メアリー(1386)　2D6 = 10　部位表　2D6 = 5


-5：全ての支払いを請求される。次回更新時アイヴォリーは死亡する。
-4：いずれかの部位を欠損する。永久に該当ペナルティを2倍量受ける。
-3：いずれかの部位の末端を欠損する。永久に該当ペナルティを受ける。
-2：いずれかの部位を派手に損傷する。適切な処置が施されるまで部位表のペナルティを3倍量受ける。
-1：いずれかの部位を損傷する。適切な処置が施されるまで部位表のペナルティを2倍量受ける。
0：いずれかの部位の末端を損傷する。適切な処置が施されるまで部位表のペナルティを受ける。
1：いずれかの部位から出血し続ける。適切な処置が施されるまで部位表のペナルティを受ける。
2：いずれかの部位から派手に出血する。次回更新時、部位表のペナルティを2倍量受ける。
3：いずれかの部位から出血する。次回更新時、部位表のペナルティを受ける。
4：いずれかの部位から多少出血する。実際の影響はない。
5：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。
6：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。
7：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。
8：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。
9：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。
10：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。

11：運命調律者の気紛れ。今回は支払いは行われない。ただしこの項目は消失しDoDスケールが進行する。
12：意志の力で運命を抑え込む。DoDスケールをひとつ押し戻す。


　地下牢の中、独特の冷たい空気が緩やかに奥から流れ込んでくる。湿度も高いため、寒い夜など急激に温度が下がった時などには、稀にではあるが屋内であるにもかかわらず霧がかかることもあった。だが、その霧はいつでも足元を低く流れるのみでそれ以上高くまで上がってくることはない。緩やかな風の存在を目に見える形ではっきりと印象付けようとでもしているかのように、その霧は奥から入口の方へと最下層をゆっくりと流れていく。それはまるでこの地下牢で息絶えた者たちの魂が、外への出口を求めて彷徨っているかのようにも見えてあまり気味の良いものではないのだった。
　どこかから啜り泣く声が聞こえる。それはこの冷たい空気と湿った床での浅い眠りがもたらしたものか、遥か遠くから入り組んだ迷路の壁を反響してくるように、遠く遠く聞こえた。
　浅い眠りからその泣き声に刺激され、アイヴォリーが静かに目を開ける。地下牢という場所、そしてそこを統べる“命なき者たちの王”という敵の特性。そうしたものが指し示すアンデッドという魔物は眠らない。警戒してもし過ぎるということはないのだった。
　警戒し過ぎた夢の中の出来事か、とも思ったのだが、眠りから覚醒した今でもその泣き声は確かに聞こえている。つまり、それが夢の中の出来事ではなく、魔物にしろ死者の霊にしろ、現実に存在している何者かが引き起こしている現象、ということだ。
　身体を動かさずに意識を巡らせる。アンデッドで啜り泣くようなものは、大抵肉体を失い霊体だけになってしまった低位の霊がほとんどだ。彼らは現世に思い残す何かしらの物事があり、それに対する想いが強すぎて死した後も魂をその場に遺してしまう。それが成就しない悲しみを訴えて啜り泣くのだ。実際に物体の身体を持たないために傷つけることが難しいという点では多少厄介だが、敵として戦う分にはさほど恐ろしい相手ではない。魔力を付与された武器やそういった魔的なものに対して効果のある銀製の武器はもちろんのこと、最悪の場合炎でも浄化の効果が期待できる。月光に晒したものを始めとする聖水なども効果があるために、物理攻撃しか手段を持たない者でも対処の手段はあるのだ。かつてそうしたものを全く準備していない状態で霊体に遭遇したときには、アイヴォリーは手持ちの塩から塩水を作って聖水代わりにしたこともあった。無論純粋な魔力からなる魔術も有効で、精霊に近いエンブリオが使役できるこの世界ではより対策は容易だろう。
　だが、もうひとつ厄介な相手が残っている。“泣き女”と呼ばれるものがそれだ。青白く痩せ細った女の姿で現れるそれは、その特性からアンデッドに分類される世界もあるが、その実態は精霊に近い。夜になると家の戸を叩き、啜り泣きながら家人の一人を指差す。それだけなのだが、泣き女は非常に危険な存在だ。何しろその指は“死の指”なのだ。その痩せた指で指された人間は近い内に必ず死を遂げる。事故であったり病であったり、またはその死の予言に堪え切れずに自ら命を絶ったり。原因は様々だがその予言は必ず実現する。彼女たち“泣き女”は、死の運命にある者が可哀想で同情してい泣いているとも、その運命を忠告するためにやってくるとも、また道連れが欲しくて彼女たちがその運命を運んでくるとも言われている。要するに“泣き女”の本当のところを知る者はいない、ということだ。唯一彼女の指を覆すためには、直接“泣き女”を倒すしかないといわれているが、彼女たちはかなり上位の精霊に属するために強い。霊体と同じような手段で傷つけることが出来るものの非常に頑強で、生半可な攻撃は受け付けない。そして彼女たちを怒らせるとその泣き声が絶叫へと変わり、その叫びは聞いた者に即座に死をもたらすといわれていた。
　“泣き女”が相手だった場合、状況は厄介だ。エンブリオ経由で傷つけることが出来るにしてもアイヴォリーとシェリー二人には致命傷を与えるほど有効な攻撃は持っていないだろう。しかも耳から無差別に訪れるその攻撃はアイヴォリーの身上である身の軽さでは被害を軽減することさえ出来ない。
　だが、とりあえずその泣き声は近づいてくる様子はないようだ。同じ地下牢の最下層のどこかから聞こえてくるのは確かだが、同じ距離から動こうとしない。アイヴォリーの優れた聴覚をもってしても、複雑な構造で迷路状になった壁を反響して聞こえてくるそれの発生源を掴むことは困難だった。

ヤレヤレ、泣きてェのはコッチだぜ。

　心の中で毒づいて、アイヴォリーは静かに寝袋から滑り出た。眠った感覚からすると恐らくまだ深夜だろう。明日寝不足でまた嫌味を言われるような事態を避けるために、アイヴォリーはさっさとけりをつけてしまうことに決めた。敵ならば二人を叩き起こして戦うなり逃げるなりするしかない。何はともあれ偵察に行こうと決めて、アイヴォリーは何気なく夜営の他の二人の方へと目をやった。
　妖精の少女メアリーの方は小さくてはっきりしないものの、何やら寝言が聞こえてくる。“羽王昇降拳”などと小さく叫びながら何かの型を繰り返しているようだ。良く分からないが、彼女が日頃から言っている羽蟻拳とやらの技なのだろう。
　もう一人、エルフの少女の方へと目をやってアイヴォリーは目を細めた。寝床が空いている。ついさっき抜け出したところなのか、まだそこに誰かが寝ている様な存在感が微かに残っていた。薄暗いこともあって、注意しなければ見落としていたかも知れないところだった。

このクソメンドクセェ時にいねェのか。

　心の中でもうひとつ毒づいて。敵の捜索と味方の捜索、二つの仕事を片付けるためにアイヴォリーは静かに歩き出した。


　地下牢の廊下を静かに、低い姿勢で滑るように進む。角から角へ、壁沿いの最も暗い部分をなぞるように、闇に溶けながらアイヴォリーは迷路状になった地下牢の各地域を見て回っていた。地下、それもかなり深層でしかも夜とはいえ、完全な暗闇でもない。天然なのか発光する苔が小さく群生している場所があったり、誰か既に通過した者が残して行ったのか長時間持つ魔術の明かりが分岐路に点灯されていたりする。時折地下牢の中から淡く漏れ出る燐光が目に入ることもあった。最後のそれに関しては、面倒を避けるためにも近づくべきではなさそうだったが。何にしても、夜目を鍛えられたアイヴォリーには十分な明るさだといえる。そもそも盗賊は人工物で忍ぶことを得意としているため、こういった場所で身を隠すことはアイヴォリーにとって何の造作もない。静かに、素早く、アイヴォリーは丹念に夜営から同心円を広げるようにして確認済みの安全な範囲を広げていた。
　大分声に近づいて、アイヴォリーは足を止めた。正面の十字路、左手から漏れてくる明かりが揺れている。明かりの種類が何であるにしても、それを揺らめかせる要因があるらしい。少し十字路へと近づくと、そちらの廊下の先、壁に影が映っているのが見て取れた。泣き声はすぐそこだ。恐らく、その人影が発生源だろう。
　相手に発見されないように十字路の角に屈み込み、エルフの外套の物入れから小さな鏡を取り出す。何の飾りもない、親指程度の小さなそれは到底身繕いの役に立ちそうにはない。そもそもそれは身繕いのための鏡ではなく、こうしたときに使う“盗賊の七つ道具”のひとつだった。
　鏡だけを角から差し出して十字路の向こうを鏡越しに覗き見る。それに映った人影を見て、アイヴォリーはこの夜三度目の溜め息を心の中でついた。

ヤレヤレ、泣きてェのはコッチの方だッつーの。

　何があったのかは知らない。知ろうとも思わなければ、彼女も話そうとはしないだろう。そもそも、今この状況を見られたいとも思っていないだろう。
　思わぬところで今夜の任務二つを同時に完了してしまったアイヴォリーは、そのまま静かに夜営へと来た道を引き返し始めたのだった。

斧を握りしめた手が怒りにわなわなと震えている。
斧を突き付けたのに6ゾロとは心外極まりない！！　DoD 2D6 = 10 ( 5 5 ) 　部位 2D6 = 3 ( 2 1 )