この世界に迷い込んできて、26日目。
相変わらず元の世界に戻る手段は見つからず、戦う日々が過ぎていく。
かちりと狗牙砕月を鞘に収め、私は掃除が行き届いた調理場の天井を見上げ、小さく溜息をついた。

「どうしたの？玉藻。疲れた？」

ふわりとペンダントが光を帯びて、時風が姿を現す。
私は首を横に振り、大丈夫だということをアピールしてから、ゆっくりと辺りを見渡した。

「……いえ。元の世界に帰る方法は、相変わらず見つからないなと思っていただけです」

任務が終わり、相棒の目の前で姿を消した日から、26日が経過している。
あの相棒のことだ、きっと組織のリーダーや仲間たちに迷惑をかけているに違いない。
できることなら、早く帰って自分の無事を伝えたいけれど――。
ぼんやりとそう考えていると、ふわふわと私の近くで浮遊していた時風がちょこんと肩の上に乗ってきた。

「……玉藻は、やっぱり帰りたいの？」
「帰らないと迷惑をかけ続けることになりますから」
「……そっか」

小さく呟いてから、時風はふわりとペンダントに戻っていく。
そんな彼女の様子に、私は小さく溜息をついた。