さんじゅうごにちめ。

少し気合を入れて挑んだ狩猟は呆気なく完了しました。
特に危険もなく私達は新鮮な蛇の肉を３つ手に入れることができました。

早速肉が悪くならない内に手早く下拵えを済ませます。
1つは調理に使って、残りは干して干し肉にします。

本当はまだ蛇肉を使うほど食料は切羽詰ってないです。
でも私は大丈夫にしても、アラヤちゃんが後々で蛇肉を食べれるかどうか分からないので
ここで少しアラヤちゃんが蛇肉を食べれるか確かめる為に敢て蛇肉で調理します。

下拵えを済ませた蛇肉に木串を刺して塩を振りかけてからじっくり丹念に炙って焼いていきます。
蛇肉はしっかり奥まで焼かないとお腹が痛くなるので注意深く焼きます。

･･･そういえば農場に居た頃。
食べ物が殆ど無くて困ってた時に、こうやってお兄さんが蛇を捕まえて焼いて食べさせてくれてました。
その後、蛇の捕まえ方や危険な蛇の見分け方とかも教えてくれました。

思い出に浸ってしんみりしてると、蛇の肉が程よく焼けて食べ頃になってました。
焼けた蛇肉をアラヤちゃんの所に持っていって差し出します。

アラヤちゃんは差し出された蛇肉を手に取るとおずおずと一口。
もぐもぐと反芻してるアラヤちゃんを見て、どうやら蛇の肉だからと食べる事にはあまり抵抗は無いようです。
食べてるアラヤちゃんの表情は特に変化は無くて、普通に美味しくも無く不味くもないといったような感じの顔をしてます。

私がじぃっとアラヤちゃんの顔を見てると、アラヤちゃんが少し照れた顔で「おいしい」って言ってくれました。
多分私がアラヤちゃんの食べてる様子をずっと見ている事を感想待ちを勘違いしてお世辞でそう言っていくれたのだと思います。

彼女と仲良くなれた──そう思うととても嬉しくなって笑顔になります。
私はアラヤちゃんの隣に座ると自分の分の焼いた蛇肉を取り出して早速口に運びます。

昔に食べた懐かしい味･･･でも、アラヤちゃんと一緒に食べると前より少しだけ美味しく感じました。


　＊　＊


アラヤちゃんと仲良くご飯を食べた後。
干し肉にしてる蛇肉の様子を見に行きました。

本来は干し肉になるまで数日はかかるのですが、
そんなに時間をかけてられない私は魔術でぱぱっと干し肉にしていきます。

氷結魔術を応用して蛇肉を瞬間凍結させた後。
凍らせた蛇肉の表面の気圧をほぼ真空状態にまで引き下げて･･･吊るした蛇肉の下に火のついた炭を置きます。

下がった気圧によって蛇肉に含まれる水分の沸点が0度以下まで下げられるので、炭火の熱だけで蛇肉が手早く干物にする事ができます。
また凍結させている事で『氷→水→気体』の３プロセスを『氷(真空)→気体』の２プロセスに短縮する事ができます。

この短縮原理を昇華といって、私はこの事を『昇華式凍結乾燥法』と言ってます。
ちなみにこの知識は、農場に居た頃に本でお勉強した知識なのです。


･･･ついでに言うと、これを大型化して魔術式に組み込めば簡易的なミイラ製造機にする事もできます。
例えば、そう･･･捕まえた人間の腕や足に術式をかけて部分的ミイラにして拷問したりとか･･･。

ぶんぶんと顔を振っていけない考えを振り払います。

･･･でもどうしてかしら。先程の考えはもう既にどこかで実行済みな感じがするのは･･･。


ぼんやりと考えに耽ているとアラヤちゃんがこちらに来て声を掛けてきます。
どうしたのかなと聞いてみると、あの吊るしてる蛇肉の事が気になって尋ねてきたようです。

私は蛇肉を吊るして干し肉にしてる事や魔術を使って手早く乾燥させてるという事を伝えると
アラヤちゃんは何だか感心したような感じで、再び干してある蛇肉の方を視線を向けます。

すると、先程は居なかった魔物達が吊るされた干し蛇肉欲しさに群がっていて、それを見たアラヤちゃんが呆れた声を出してました。

アラヤちゃんの声で気付いた私は慌てて干し蛇肉を回収しに武器を取り出して群がる魔物の方へ向かいます。
非常時用とは言っても大事な食料。盗られる訳にはいかないと魔物達の追い払い合戦が始まります。