新王パラダイスとの戦い。

子供は下がっていろとでも言わんばかりの勢いで先頭に立つサバス。
槍を構えたチハヤも後に続いているのを見て、僕も前に出ようと慌てて一歩踏み出す。
……が、その瞬間、

奇才サバス『少し重いな・・・・・・　・・・・・・ふむ。』

目に入ったのは、服を脱ぎ捨ててパンツ一丁になるサバスの姿だった。

あまりの酷さに一瞬固まってしまい、前線に出る機会を完全に逃してしまう。

それならばと気を取り直して後方支援に徹する事にした。
此処に来てからは騎士として前線に立つ機会が多かったものの、元々、こっちの方が専門分野だ。

強力な補助魔法と回復魔法を何度も重ねる。
これだけやれば、装甲を自ら脱ぎ捨てたサバスはともかく、他の二人は問題なく守ることができる。

猛攻をしのぎながら隙をついて鋭い刺撃を繰り出すチハヤの槍の前に、とうとうパラダイスは動きを止める。

王が動きを止めた途端、咲き乱れていた周囲のネクターが、少しずつ蕾になっていく。

パラダイスとサバスが言葉を交わす。
サバスの問いかけに対して、

新王パラダイス『・・・・・・。まだ、だな。』

そう呟くと、パラダイスから黒い霧が出てきた。

途端にパラダイスが倒れる。

黒い霧は庭園の更に奥へと消えていく。

サバス『恐らく奪われたネクターは全てここに集められている。人を集めて少しずつ回収していくといい。種子の類いは、この先だろうか。適当に動くといい。』

そう言い残し、サバスは霧を追って奥へと進んでいった。

霧とサバスを追おうかどうか考えたが、このネクターを回収して必要としている人たちに届けるのが先だろう。
そう告げようとセリーナの方を見たら、セリーナは僕の目を見て静かに頷く。

武勲よりも困っている人を助ける事を優先とする神聖騎士である僕も、
戦いよりも物を人に届ける事が得意な商人であるセリーナも、王を倒す事よりもネクターを届ける事が優先だと考える。

お互いの信条を理解しているからこそ、セリーナには言わずとも僕の考えは伝わっていた。

とりあえず二人で持てるだけのネクターを持って、天蓋庭園を後にした。

　　　　　　　　ものすごく本気の顔だ。

　　　　　　　　寂しいことだな、としみじみとこぼす。

　　　　　　　　マッシヴなあなたを想像したのだろうか。
　　　　　　　突然ぶははっと、吹き笑いだした。こうなっちゃいけない、君は。