愛銃……もう、すっかり手に馴染んだ、玩具の銃。
其れを憑代とした、不可思議な精霊、ノトス。
“何故”
不意に問いかけられた其れは、思った以上に己の意識に強く、根付く。
“何故”
こうして、何の気無しに焦点を合わせられるようにはなったが、今の自分の、左右の視力差は如何程なのか
“何故”
眼、だけではない。少し振り向けば、己の背には人外の翼が宿っている
“何故”
―――……ネクターを憑代としたもの、だろう。それは恐らく変わらない。
“何故”
―――……己の体は、供物の如く捧げ続けられるのだろう
“何故”
―――……身を捧げれば捧げただけ、己は苛烈な戦いを生き延びる
“何故”
―――……考えた事等、無かった。

終わり、の足音を感じるのは、気の所為ばかりでは無いだろう。
その後は？
これだけ長い付き合いとなった愛銃との別離が待っているとでも言うのか？

王を失ったこの地がどうなるのか見届けたい。
そんな、興味本位の思考が無い、なんて言うのは嘘だ。
けれど……

一度分解し、清掃し、組み上げる。すっかり慣れた挙動で銃のメンテナンスを終え、ぐっ、と、背を伸ばす。