(引き続き前回の続きとなります。
プロットあったはずなのに、
プロットから逸れてゆく。
それないよう気をつけよう。うん。)

午後の授業に関して、
特筆する事は無かった。
というのも、
咲良さんとの一件で、
物珍しさもさったのだろう。
こちらに向けるチラチラとした視線も無くなった。
人間存外順応が早いものである。
咲良さんとのやりとりで、
どう向き合い、
どう付き合っていくのか。
各々の心の内で決めたのだろう。
まぁ、もう少し注目を集めておけたら、
もう少し楽しい事になったのでしょうけど、
贅沢はいってられないし、
余りにも楽しすぎる展開だと、
いつぼろが出るかわからない。
これでも猫は被っているのだから、
出来ればなるべくばれないようにしたいものである。
まぁ、そんな些細な事はさておいて、
授業もホームルームも終わって放課後になると、
咲良さんが私の所へやってくる。
「あの！
　その……
　……よかったら一緒に帰らない？
　えっと、魅月さんはどこに住んでいるの？」
「ええ、私は――」
「えっ！
　そうなんだ。
　それじゃ、同じ方向だね。
　よかった……
　あ、私が住んでるのはね――」
「まぁ、逆の方向なら一緒にとは中々いかないものね。
　ええ。
　貴女の住んでいる場所がそこだというなら、
　丁度私が貴女を送る形になるのかしら？
　でも、本当に私とでいいの？」
「えっと、その……
　なんていうか、
　――折角仲良くなってくれるのだから、
　もっと魅月さんの事を知って仲良くなりたいし……
　理解できるとまでは思ってはいないけど、
　うん。
　一緒にいる時間を作らないともったいない。
　そういうのが一番しっくりくる、かな？」
「それは嬉しいし、
　私としては願ったり叶ったりだけど、ね。
　――まさか貴女の方からそこまで踏み込んでくるとはね。
　予想外だったわ。」
昼間に話しかけてきたとはいえ、
基本的にそこまで積極的ではない子だと思っていたし、
流石に私に話しかけた時点で勇気がきれて、
放課後は結局何も話せず仕舞いというのが私の予想だっただけに。
そして、そんな咲良さんがお誘いまでかけてきたのだ。
そこまで好かれるような事をしただろうかといわわれば否だし、
何か目的があって私にという話であれば、
正直な話、
あれだけの話で向こうがメリットと考えることは一切ない。
「えっと、それは、その……」
「……？」
なので、言いよどむ彼女にどうかしたのかしらと、
微笑んで首を傾げる。
何故、と思って疑問が生じ、
問題なくその疑問を解決できる状況。
利用しない手はない。
分からないから教えてと聞く子供の如く、
さすがにこの状況でしらを切ったり、
話の流れを変えるなんて事はできないだろう。
もし、出来るのだとしたら、
私が盛大に彼女のことを見誤っていた事になる。
もし、
そうだったなら、
咲良さんは本当に恐ろしい人だが――
「お、怒らないで聞いて欲しいんだけど……
　その、昔小さい時にね？
　優しくしてくれたお姉さんに魅月さんが似てて――
　その人も魅月さんみたいにセーラー服を颯爽と着こなしてて、
　それで――
　その人とは４回くらいあっただけで、
　それっきり見かけなくって音沙汰なくて……
　何かそのお姉さんが戻ってきたみたいな感じがして――
　誰かの身代わりで、
　もう１０年ちょっと前の事だから、
　気を悪くしないで。
　別にそのお姉さんの代わりになってだとか、
　そのお姉さんの代わりにしようなんて思ってないから！
　ほんとだから！」
どうやら案の定そうではなかったらしい。
しかも原因は恐らく私本人だろう。
そういえば、１０年程前もこの辺りにいた記憶はある。
そんなに長い間ではなく、
短い間ではあったが、
その時に少し親切にして仲良かった女の子がいた記憶はある。
お互い別に名前を名乗ったりしていないし、
女の子は少女へと成長し、
私はずっと私のまま。
分からなくても当然だろう。
言われてみれば少女の面影もある。
「成る程ね。
　言われてみれば納得したわ。
　そのお姉さんという人物がどんな人かは分からないけど、
　親しかった人に似ている相手というのは、
　どうしても親しみを持つものね。
　光栄というべきかしら？
　貴女のような可愛らしい人に、
　未だに思われてる人に似ていると言われたことに。」
「え、か、可愛らしいだなんて、
　そんな事無いよ。
　それに、思われてるって、
　間違ってないけど、
　間違っても私そんな趣味ないからね！」
「まぁ、私も別にそんな趣味はないわね。
　別にそんな趣味を持っていても別に構わないけど。
　私は私らしく対処するだけだし……
　そっちの趣味に踏み込ませたいなら、
　努力次第かしら。」
「だから、そんな趣味はないから！
　もう！」
しかし、そう思い出してみると、
ついついからかいたくなる。
彼女の怒った顔は実に可愛らしいから。
「ふふっ。
　ごめんなさいね。
　あわててる様が可愛らしくて、
　ついついからかい過ぎてしまったわ。
　さて、と。
　で、一緒に帰るのはいいとして、
　もしよかったらだけど、
　もう一人誘ってもいいかしら？
　先に下駄箱にいって待ってもらったら、
　連れて来るわ。
　まぁ、連れてこられればになるけど。」
「むぅぅぅ……
　まったくもー……
　じゃあ、先にいって待ってるから。
　それで、勿論構いませんとも。
　……他のクラスにもう友人作っていたんだね。
　いつの間に……」
「ちょっとした縁から知り合ったって感じね。
　ありがと。
　それじゃ、私は呼びに言ってくるわ。」
ひらりと手を振って咲良さんと一旦別れ、
階段を上って屋上へと続く階段の前へと速やかに移動する。
私の目的の人物がどこにいるかは、
すぐに把握できる。
行動に想像がつく上に、
私には頼りになる情報員が多数いるのだから。
見逃すはずも無い。
大きく息を吸い込んで、
私はゆっくりと屋上へと続く扉を開き――
「睦美先輩、一緒に帰りましょ？」
大声で屋上で寝そべる彼女へと声をかける。
「うわぁっ！」
まさか、放課後に屋上で一人いることに気づかれない、
気づかれたとしてもどうせ自分に近づくなんていない。
そう思っていたがゆえに、
私に声をかけられてびっくりしたのだろう。
盛大に驚き、
驚いてはねるように起き上がる睦美さん。
「だ、誰って……
　あー、もう魅月か……
　なんであたいがここにいるのに気づいているの？
　誰かに聞いた？
　まぁ、あたいが放課後ここにいるの知ってる奴は、
　同学年ならそこそこいるしなぁ……」
「いえ、別に誰にも聞いてないわよ。
　貴女のことだからここにいると思って、
　真っ直ぐにここにきたのだけど。」
「だから怖ぇえよ！
　なんで分かるんだよ！」
「だって、定番でしょう？
　屋上に不良って。」
「……いなかったらどうするんだよ、それ。」
「あら、いなかったら来ないわ。」
「……あーもー。
　これ以上聞いても不毛なだけか。
　いいよ、全く。
　で……一緒に帰ろうだっけ？
　嫌だっていったら？」
「……」
先輩からの質問の回答に、
私は無言で微笑むを選択する。
１００の言葉よりも、
無言の微笑みのほうが効果的な事は多い。
なお、この場合の微笑みは、
相手を無駄に怖がらせるためのもの。
案の定、
「その意味深な微笑みはやめろよ、
　やめて、やめて下さい。
　なんかすごい嫌な予感するんだけど。
　え、何、どんな意味の微笑みなの？」
「え？
　別に何もないけどって微笑んだだけだけど、
　何か問題があったかしら？」
「問題しかねぇよ。
　あんたの微笑み異様に綺麗で怖いんだよ。
　実力だけでなく、
　性格的にも曲者だろうに。」
「よく分かるわね？」
「……初対面があれだったら、
　誰だってそういう印象抱くよ。
　うん。
　まぁ、良いよ。
　どうせもうすぐ帰ろうとしてた所だし、
　別に予定はないし、
　邪険にしたとこであんたには意味も効果もないしさ。」
「……」
「な、なんだよ。」
「素直すぎて驚いただけよ。」
「あんたみたいなタイプの相手に意地はっても、
　ろくな事にならない。
　それを知ってるだけだって。
　まったく……私と親しくしても不利しかないだろうに。」
「不利か有利かは私が決めるわ。
　さ、待たせてる子もいるからさっさといきましょう？」
「ちょ、おま……！
　何も知らない子巻き込むってどうなのよ。」
「いいのよ。」
「……」
あまりにもばっさりした私の言葉に、
言葉も無くあきらめたように一つ首を振って、
置いてあった鞄を拾い上げて私の後についてくる。
そうして下駄箱に向かう途中も、
ついてからも何かざわざわした空気があったが、
一切気にせず咲良さんの下へと移動する。
「お待たせ。
　誘ったら快く来てくれたわ。
　こちら、三年の櫻井睦美さん。
　睦美先輩でいいと思うわ。
　怖いところもあったり、
　色々何か既に聞いてるかもしれないけど、
　そんなに悪い人じゃないから心配しなくていいわ。
　それに何か困ったことがあれば先輩にいえばいいと思うわ。
　物理的に何とかできることなら大体解決してくれると思うから。」
「おい。」
睦美さんの背後からの突っ込みを無視しつつ、
そのまま咲良さんを睦美さんへと紹介する。
「で、こちらが私の友人の佐々木咲良さん。
　あまり怖がらせないであげてね。
　とても可愛らしい子だから、
　すぐに怯えてしまうわ。
　もし何か助けを求められたら力になってあげて。
　悪い子じゃないから。」
「あ、はい、佐々木咲良です。
　どうかよろしくお願いします、
　その……睦美先輩ってもしかして、
　あの……」
「どのかは分からないけど、
　不良だとか悪い噂なら間違いなくあたいだね。
　まぁ、かといって魅月相手だと毒気抜かれるし、
　その関係者相手にどうこうするつもりはないし、
　知り合った以上必要があれば力になるよ。
　その代わりといったらなんだけど、
　魅月がらみで何かあって、
　助けもとめた時は出来るだけ力になってくれると切実にうれしい。
　……魅月とは長いのかい？」
「あ、は、はい。
　ありがとうございます、
　ええと、
　魅月さんとはつい先日代表を押し付けられた仲といいますか――」
「……ああ、成る程。
　お互い苦労するね。」
「いえ、別に、これくらいなら大丈夫ですから……」
恐らく普段ならば、
喧嘩腰で、
恐れられて終わるほどの酷い印象で終わるだろうが、
私がいることで毒気を抜かれて喧嘩腰になっていない睦美さんとなら別。
基本的に悪い人間ではなく、
律儀で恐らくは面倒見が良い面を知れば、
咲良さんの事だから良い人なんだという印象のほうが勝り、
親しくしようとする。
そうなれば、
咲良さんの可愛らしい性格を知って、
睦美さんの庇護欲を誘うだろう。
きっと仲良くなれるだろうとは思う。
まぁ、喧嘩するなり、問題がおきたら私が動けばいいだろう。
「さ、それじゃ一緒に帰りましょうか。
　出来ればこれからも一緒にこうして仲良く帰りたいものね。」
「え、これからも……？」
「そうだね！
　これからも仲良く帰れたらうれしいな。」
「え、ちょっ、ちょっと待って。
　あたいと一緒にいると――」
「悪い噂なんてそのうち消えるわよ。
　それに貴女の事を知っているなら、
　敵に廻そうとする人のほうが少ないでしょう？
　逆に安全なくらいよ。」
「う、うーん……」
「そうだよ、睦美先輩、
　気にする必要はないよ。
　それをいうなら魅月の方が……」
「あー……」
「なんでそこで納得するのかしらね？」
『だって、ねぇ？』
まだ会って間もないはずなのに、
声をあわせて仲のいい事で。
そういえば、
二人とも私の被害者だったわね。
まぁ、故にお互い私に含む所があるというか、
二日で既にやらかしているが故に、
一番トラブルを招きやすいのは私だと思っているのだろう。
実際、確かに誰のトラブルが降りかかりやすいかといわれれば、
私なのは間違いないわけで。
「あら、唱和するなんて酷いわね。
　まぁ、私がらみで何かあったら私がなんとかするわよ。」
「あはは、ありがとう。」
「あんたが動くより、
　自分でなんとかしてからの方がいい気がするのはなんでだろうね？
　ま、その時はお願いしようか。
　魅月の責任な訳だし。」
顔を見合わせて、
３人笑う。
まだ学校が始まって幾許もしないというのに、
今後１年、楽しくやっていくお友達が出来て嬉しい話である。
「ふふ、それじゃ、今度休みの日に花見なんてどうかしら？
　場所は学校で。
　お弁当は私が作るわ。」
「お、いいね。」
「魅月さんのお弁当か。
　楽しみ。」
他愛の無い会話をして下校する三人が、
これからどうなっていくかは別のお話――

黒猫の気配が朔位の足にすり寄って喉鳴らしてる。メルンテーゼ以前の棲家の匂いがするからねー

猫は放置。実体あると毛が付くから嫌だけどこの状態の猫ならその点気にしなくていいからな。

朔位、律儀に豊撞謹製御節の重箱を持ってきた。

魅月さんにフォーユー

ワカツキ大喜び。
ちゃんとお座りして御相伴待ってる。

　　　　　　　無言で鏡を見つめると、勢いよく額を叩きつけた

　　　　　　　割れて血塗れになった鏡を渡した