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　　　　　　　↑サラミス↑　　　　　　/　　　　　　↓ミジョー↓
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『思い返せば、何度も、私は命を助けて貰って来ました
全ての助けてくれた人達の事を忘れないような生き方をしようと思ったら
…私は』

『私は…』



ミジョー・ゼルカ。

ウィミノイウェーブの比較的裕福な家庭に産まれた少女には
世話係として人畜が買い与えられた
少女はペットを買い与えられたこどもそのままに
遊び相手を貰ったのだと無邪気になついていた。
だが人畜は反乱を起こし、少女の世界はいっぺんにひっくりかえった。

（彼は家族みんな殺すつもりだったと言っていた
　なのに　
　私だけを生かした
　それが残酷なことと解ってそうしたのだろうと私はずっと思っていた。
　それでも
　今は少し思う　彼はとかく私の命を見逃したんだ）

（私の命を見逃した時　彼が私に言ったこと
　『尊厳を踏みにじられた人間は殺意を抱く』）

http://dolch.bitter.jp/sub/colorkrr/story/u07.html



そうして人畜へと堕ちた少女を迎え入れたのは、ドニィという富豪だった。
彼女を含めた10人の人畜の中、一人奴隷としてではなく
ペットとして可愛がられる男がいた。労働もせず、虐待も受けず寵愛を受ける。
仲間達は彼を慕っていた。

（幾度となく）

（幾度となく
　みんなの心が折れない為に　知恵と勇気がかれてしまわないために
　彼は私達を助けた
　彼自身の身がどれ程削れていたのか
　彼は…なぜそれほど私達のためになってくれたのか
　考えてもわからない
　解らないほどに、きれいだった
　やさしかった）

（なのに私は彼がきらいで
　彼に怒ることで生きる力を貰ってた）

（私達を生かし、情動の火を絶やさせず、自由に導いた彼）


だけど彼は変わってしまった。


少女が彼の支配を抜け出した時の事も。
少女は彼の片腕として、特別あつかいを受けている
『ソプラニアス』という少女があんまりぞんざいに殺されるところを見てしまった。

（私たちはみんな霧の鎖で繋がれていた
　逃げ出そうと持ちかけたとき
　みんな私をいやな目で見た　サブリーナが私を殺しかけた
　私にのしかかって、首を絞めて　爪が…
　…
　だけど殺されなかった
　カルジャが助けてくれたんだ
　私は夢中で、ただ走る事しかできなかった
　カルジャはどうなっただろう
　そんなこと…そんなこと解る。）

（お気に入りだったソプラニアスですらあんな風に殺されたのに。
　カルジャ…みんな…ごめん
　私だけが…）

（…お父さん　お母さん
　ごめんなさい
　私だけが）



逃げ出して、やがて少女はイコンという女性にであう。
少女はイコンに庇護を受けながら、徐々に平静を取り戻した。
幾度目かの分岐点だった。
少女はイコンの背を見、銃を手にする事を望んだ。
イコンもまた、銃ひとつで生き延びた経歴を持つらしい
その姿に、一筋の希望を見出したのだ


（『この“技術”を識って欲しい』）

（『私の中にある知識を誰かに分け与えたいっていう…“私の”欲求』）





私を助けてくれた人達は
私に何を望むだろう
何も望まないのかもしれない
けれど私は彼らの意思を忘れたくない
私は……


帰らなければならない
強くなって、私の家にも、仲間達の元へも
もう遅いかもしれない。きっとそこには何も無い。
お父さんもお母さんも、ソプラニアスも、みんなが殺されてしまったあとだ。
みんな殺されたあとへ、誰かが行かなければならない。

（ラーラ、ごめん
　ドニィの元で、あんたがお仕置きを全部受ければ自分は助かるって思ってしまっていた
　あんたがおかしくなってることずっと解ってたのに　何もしなかった）

（ダッヘマ、ごめん
　だんだん真っ先に逃げたあんたとアウがうらやましいような気がして
　恨めしいような気がする夜があったよ　でも2人は正しい事をしただけだよね）

（アウ、ごめん
　アウがフライバイを好きな気持ちで　自分の中の苦しみを乗り越えようとしていたのも解ってたのに
　私はいつもフライバイをけなしてた）

（ルモア、ごめん
　まだ小さいのに　あんな状況に置いておかれて
　あんたがこの先どうなるのか…もう殺されたのか…。）

（サラミス、ごめん
　誰かが責任をおわなきゃいけなくなったとき、その一番難しいことばっかり
　サラミスが押し付けられてたよね）

（サブリーナ、ごめん
　あんたみたいになれたら、もしかしたら皆…よかったのかもしれない。
　でも私は嫌。私の人生はフライバイのものじゃない）

（ソプラニアス、ごめん
　私達嫉妬してた。あんたばかり贔屓されるのがおかしいって思ってた
　どうしてそんな風に思ってしまったのか、後悔してる）

（カルジャ、ごめん
　あの時は何も考えられなかったけど…土壇場でカルジャは
　フライバイも私も全く同じように大切な仲間だって思ってくれたんだと思う）


私はフライバイを殺す。彼の尊厳を護る為に。
私は生きる。イコンさんの技術を受け継ぐ為に。
そして帰る。瓶の中に閉じ込められたように行き詰っていた人畜の人生が
どこまで遠く歩まれたのかを確かめる為に。




なぜ私だったのだろう

私を助けた全ての人々の、全ての状況の　その偶然の重なりが
ミジョー・ゼルカという人間そのものになっている。