入浴したばかりの身体を寝台に投げ出す。
火照った身体が寝台に沈む。心地好い弾力を感じる。
そのまま目を閉じ


れば、あの妹の姿が浮かぶ。振り向けば、あの笑顔が


跳ね起きる。酒瓶を掴み、乱暴にグラスに注ぐ。一息に飲み干す。
この世界に来たばかりの頃はアルコールなんて殆ど飲んだ事がなかったのに、
ええと、二ヶ月くらいか。随分と慣れたものだなと思う。
グラスを卓に置き、……注いだ時に零れた紅を目にして舌打ちをしてしまう。
妹が好きだった紅茶の色を思い出す。あの夢と言うには生々しい光景とともに。

子供を産むためだけの道具になりたくないから。妹はそう言っていた。
もし自分がその立場になっても、与えられた役割だからと受け入れる事は出来る。
しかし姉さんには無理だろうな、とは考えるが、あの妹がそう言うことを言い出すのは意外ではあった。
いつも控え目で自己を主張しないあの子がそう言う事を考えていた。
あの夢の内容を間に受ければ、何処かの組織に身を寄せている、と言うことなのだろう。
それはそれで構わない。あの時は激情に駆られてしまったけど、応援してやってもいいとは思える。
あの子に自分の道を行くだけの気概があるとは思わなかったから。
でも。


何故一言も相談してくれなかったのだろう。
何故何も言わずに、自分の側から離れて行ったのだろう。
あたしは、身内から見てもそんなに信を置く事の出来ない相手なのだろうか。
姉さんもそうだった。いや、もっと悪い。何も言わずに消えてしまった。どうして、なんで。

考えても答えは出ない。酒の量だけ増えていく。

　
　　　　　 好みの変遷――時間の経過を思わせるような口ぶりで、そう告げる。　

　
　　　　　 ま、だからこそ行くんだけれどさ、と笑った。　

　
　　　　　 軽く手を振って、去ってゆく。
　　　　　　 しぶとく生き残っていれば、一区切りついた頃にでもまた遭えるだろう。