<Days52>


「これが新年の料理……ですか？」

　私の用意したおせち料理とお餅を見てルシエ・ソルブランシェが不思議そうな顔をしながら聞き返す。

「うん、これが私の住んでいた国での新年の料理で『おせち料理』って言うんだ、何とか手に入る物だけでやったから、一寸違うところはあるんだけどね」

　様々な料理の詰まったお重の蓋を開けながらそう言った。

「でもなんか色とりどりで綺麗ですね」
「だね、卵料理とか魚料理とか色々な料理を詰め合わせるんだ」
「へぇ、なんだか楽しいですね」
「うん、料理のびっくり箱とかそんな感じかな」
「料理のびっくり箱……良い得手妙ですね」

　私はおせち料理の説明をしながらお雑煮をお椀にわけてルーシェの前へ置いた。

「これは……スープ？」
「スープか……確かにそう見えるかも？でもこれはお雑煮って言って、お米で作ったお餅っていう食べ物の調理法なんだよ」
「お餅……」
「ライスケーキとも言うらしいけどね」
「あ、それは何か聞いた事があります、これがそうなんですね」

　箸でつかむと伸びるお餅を珍しそうにするルーシェを見て私は思わず笑みがこぼれる。

「食べ物で遊ばないの、お百姓さんに怒られるよ？」

　一揆に参加しているからだろうか、元いた世界では言わなかったであろう言葉がすんなりと口に上ったのが自分でも凄く意外に感じられた

「これもこの世界で一揆に参加したから……なのかな？」

　私は一人小さくそう呟くと、伸びるお餅と格闘していたルーシェと視線があった。。
　その彼女の姿が妙におかしくて、私はついつい先ほど考えていたことも吹き飛び笑い声を上げてしまう。
　ようやくお餅を飲み込んだ彼女は、自分を見て笑われたのが判り不満げに頬を膨らませた。

「そんなに笑わなくても良いじゃないですか……」
「ごめんごめん、可愛かったからついね。でもそんなに頬を膨らませてるとルーシェがまるでお餅になったみたいだよ」

　自分のその言葉で私は更に笑いが止まらなくなってしまう。
　しばらく頬を膨らませていたルーシェだったが、私の笑い顔がおかしかったのか、彼女もまたその顔を綻ばせる。
　これから私達がどうなるかは判らないが、私達の新年はこうやって笑いで幕を開けたのだった。


今回もルシエ・ソルブランシェ(2010)さんをお借りしました、感謝。


TobeContinued……