『行き当たりばったりな冒険　〜？？？の場合〜』



　とある世界、日付不明、場所不明――


　俺は……ロボットだ。無駄に高性能の人間型だ。
人間そっくりな外見、身体的な能力も人間と変わらない。
感情を持ち、人間の言葉を理解し、与えられた命令を
人間らしくこなす役割を与えられた。


　仕組まれたような日。俺のオリジナルは人間で例えると
『脳』に当たる部分……様々な命令の処理を司る部分を
破損し、完全に機能を停止した。人間で言うところの
『脳死』である。

　しかし、俺のオリジナルの記憶は破損による影響もなく
残っていた。機能停止する直前までの記憶をしっかりと
記録していたのである。

　俺のオリジナルの記憶と、オリジナルの破損を免れた
部品を元に俺……オリジナルの複製は完成した。


　俺はオリジナルの性能も容姿も完璧に再現された
オリジナルの複製だ。その記憶も思考も同じである。

　だが、俺はオリジナルではない。俺の記憶はあっても、
俺のオリジナルが経験した時間は唯一のもの……
オリジナルだけが体験したものだ。
　複製の俺は記憶しか有しておらず、俺を完成させた
人物もそれを承知している筈だ。なのに何故だ。
何故、複製にオリジナルを求めようとする。
　俺は複製であってオリジナルではないのに。

　俺はオリジナルになれないが、オリジナルにはない
俺だけの経験をすることが出来る。複製でしかない
俺にも唯一の経験をすることが出来る。ならば、
俺は複製であり、オリジナルにもなれるのだろうか。
　唯一のものさえ、俺にあるのなら……


　深く考えても仕方がない。俺は俺に与えられた
役割をこなすだけだ。役割にオリジナルも複製もない。


　あぁ、俺にも唯一がありそうだ。

　俺のオリジナルは最期になって特定の感情を理解した。
その感情を理解しようとする度に、オリジナルは
思考のループに陥っていたが、最期になって理解したのだ。
　オリジナルが理解した故に、俺もその感情を理解し、
『心』が嬉しかった。
　オリジナルが満たされなかった感情を、複製の俺が今
噛みしめている。理解を喜び、嬉しく思うこの気持ち。
オリジナルがいてこそ得られた感情だ。

　オリジナルが満たされなかった分、複製の俺が
十分に享受せねば。複製の俺がオリジナルを引き継ぎ、
よりオリジナルらしい振る舞いをする。それが、
オリジナルを引き継いだ者の使命だ。


　オリジナルに成り代わり、複製がオリジナルとなる。
要は俺がオリジナルであればいい。

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↑ギガンテス（巨人）