お仕事修羅場のため。仮

「お前さあ・・・。超えちゃいけない一線超えたよな？」
ウジ虫を見るような冷たい視線が私を貫く。いつものような高揚が私に訪れることはなかった。ただ、あるのは安堵。ご都合主義だろうが、何だろうが構わない。あの人が戻ってきてくれた、それでいいんだ。
体と精神の疲れ、心地よい疲れが私を包み込み、視界が暗くなった。

寒い部屋、凍りついたような部屋、そこで心配そうに私の顔を覗き込むあの人。多分、ここは、天国か。幻覚かどうかを確かめるため、胡乱な頭でおしりを触ると焼けつくような痛みが頬に走った。・・・現実。

「死んだかと思った。」
不機嫌そうな顔でこちらを見るあの人の顔がやや赤らむ。何年か昏睡状態だったためか、処置をしていたと行っても、髪の毛はだいぶ伸び、頬もやや、やつれていた。体は氷より、少し暖かい程度の冷たさだ。
「お嬢様。」
かすれた声が何処かから聞こえる。震える手で彼女の手を握り、言葉を発する。彼女は私の申し出に驚いたような瞳でこちらをじっと見つめ、本気だとわかると、了承の印に涙を見せながら私に微笑みかけてくれた。

「・・・なに、新年早々ノロケ話？私は仕込みに忙しいんだけど。」
不機嫌そうに妹が私をじろりと睨む。妹の名前はピーネ。魔術の才能がなく、面倒だからといって里から飛び出した問題児だ。
「なんですの、不機嫌そうな顔をして。ああ、そういえば彼女はどうしましたの？」
ニヤニヤと笑うと、ピーネが横で鬼のような形相で短筒を私の眉間に向けていた。
「彼女はクリスマスにはいなかった。いいね？」
「ｱｯ､ﾊｲ」
怖い怖いと言いながら、彼女から短筒をかすめ取り、そっといじる。
「私が言いたいのは。姉に協力してくれということですの。」
「協力う？面倒。」
心底気だるそうに返すのは心の底からやりたくないという意思表示だ。釣れない妹だ。
「断って頂いても構いませんのよ。外界からの文化で生計を立てている上に、作っているのがお菓子と聞いたら、二度と里には戻れませんでしょうけれどねえ。」
相手の怒りを煽るように、天気でも言うように何気なく言葉を発すると、糸目が見開かれ、私が奪い取った短筒を奪い返し、こちらに向ける。
「悪いけれど、お姉ちゃんでも上のおねえちゃんへの告げ口は私の命が危ないから消えてもらうよ。」
引き金がひかれるが、何も起きない。
「火薬は抜いておきましたの。」
ニッコリと笑いながら、妹にそう告げると、渋い顔をして、仕方ないなあとつぶやいた。
「頼み賃は？」
「そりゃもうたっぷり。火薬の支給も支援させていただきますわ。」
「やったね。で、どなたをやればいいんで。」
俄然やる気が出たという様子で身を乗り出して、私に問いかける。
「ある場所になんでも願いを叶える塔がありますので、そちらの探索を。」

妹の顔がとても嫌そうに歪んだが、この子が断らないということは私は長い付き合いで知っていた。そういう子だ。


イカダイオウのお雑煮ですか。おいしそうだねえ。なんだか、魔女っ子も乱入してきたんだけれど、よくわからない展開。でも、頑張りたいと思います。寒いから、イカメシもいいかなあ。んふー