〜何時か何処かのある場所〜

*SIDE*オルタンシア

シュヴァルツの部屋からかっぱらってきたこれから滅ぼす人間の国リストに魔王様と眼を通す。

・・・どうせ、非道な事をするのだ、それなら元々滅ぼされるかもしれない国を最終的に救ってみるのも悪くは無い。

ふと、紫の髪の可憐な王女の絵姿が目に入る。

「ああ、魔王様。こちらの国の王女なのですが大層美しいらしく、確かシュヴァルツが国を滅ぼした後は嫁にする！と鼻息を荒くしていましたよ。どうですか？嫌がらせにこちらの方の中に入られては。」

「うむ、よくわからんからその辺オルタンシアに任す！」

これでシュヴァルツの不純な計画ごと叩き折れると思うと、少しだけ笑みが出て来た。


現在〜次元の狭間〜

*SIDE*セツカ


目の前の光景が信じられずに立ちつくす。

レイヤ先生達の側に現れた二人…バレット王？と、あとはエキュパージュ王女…とは微妙に違う…目をとられて隙を晒して…斬られたと思った。

だが、その魔法生物は、これまた信じられない人物によって吹き飛ばされていた。

「よう。セツカ。戦闘中に油断するようなガキに育てた覚えはないぜ？」

「私もないなぁ、駄目だよセツカ。戦闘中は集中しないと。」

「影灯籠ー！影灯籠ー！影灯籠ー！」

「ばっか、お前はむやみやったら適当に打ちすぎだアホ！」

「あいったぁ！何すんのさ焔！」

「焔さん、淡雪を苛めちゃ駄目ですよ？」

…そう、戦闘中に漫才を繰り広げているのは俺の父と母…そして、師匠のオリフラムだった。

そんな馬鹿。

「…ブレイン？」

「はい！不肖ブレイン！ユカラ様の為ならたとえ火の中水の中異次元の中どんとこい！」

ユカラの前には水色の物体…旅の途中で別れたブレインがユカラに敬礼をして…

「「ブレ公（インさん？）」」

「あああ！？何故だか急に体調が還りたいに！？」

…遥か遠くから何故か呟くように聞こえて来た錬金術師の声にブレインの水色の身体が真緑に染まっていく。
還りたいのか、それ。というか、ぶれないですねこんな時でもお二人。

「…私を助けてくれるんでしょう？なら、呆けている暇はないわよ、セツカ。」

…信じられない、信じられないが俺の隣に居る人物の声を。

「…ああ。任せとけ。」

気合いを入れ直す。


*SIDE*道産子

「うぬの力はその程度か！」

囲まれて満身創痍で戦ってる最中に目の前が急にぱぁっと光ったと思ったら現れたウサギ先生がバスターソードを振りまわして魔法生物を蹴散らす。

「う、うさぎ先生…来てくれはったんですか！そ、それに！」

「よう、道産子！久しぶり！」

「カムイ、お久し。」

目の前には兵庫のパンツ愛好家のナナはんと…

「ナナはん…それに、海鮮三色丼はん！」

海鮮三色丼はんが盛大にずっこける。

「ねぇ、もはや「カ」しかあってないよねその名前！？」

「冗談や冗談、カツオはんも…よう、来てくれました。」

何処かで兵庫の危機を聞いてかけつけてくれたのだろう。

「いや、相変わらず名前は間違ってるけどな？」

「まー、そんなことはどーでもいいとしてだ。道産子！」

ばっとナナはんが（多分）兵庫のパンツらしきものを差し出す。

「…多分、今、ヒョーゴはパンツはいてないと思うんだ。だから、着せてやってくれ。」

手伝いはするからな、と呟いた後に魔法生物の元へ飛び出して行くナナはんとへーいとけだるそうなカツオはん。

「道産子、グットラック」

ウサギ先生はグッと親指を突きたててくる。今にもマグマに沈んで行きそうだ。


「…よっしゃあ！行くでぇえ！」

萎えかけていた心が、復活した。


*SIDE*サクラ

「大丈夫？サクラねえちゃん。」

「えええ！？み、深雪ちゃん！？」

レイヤ先生に回復魔法をかけているであろう女性に声をかけようとしたら、逆に隣に居る…居るはずのない深雪ちゃんに声をかけられる。

「大丈夫だよ、サクラ。サクラは私がちゃんと守るから！」

そして、目の前の魔法生物の攻撃を黒いシールドで防いでくれているウルド。


「「私達は、どんなことがあってもサクラ（ねえちゃん）のずっ友だよ！」」

沈みかけた心が、蘇った。

*SIDE*レイヤ

「バレット、これはどういうことだ。何故、お前やシビルが…そもそもシビルが何故！？」

「落ち着いて、レイヤ。身体にさわるわ。」

あまりにも混沌とした戦場にさすがの俺様も冷静さをかいて叫ぶ。

「まあ、お察しの通り、俺達はこの世界に居る俺達じゃない…召喚獣みたいなものだな。俺達は、お前たちの記憶の中から召喚された。」

「記憶…召喚！？」

昔、アカデミーの古い本の中で見たことがある。

記憶の中から物や人等を召喚する禁呪。

記憶の中からならどんなものでも召喚可能という危険な召喚魔法。

「そうだな、勿論、代償はでかいがな。」

「術者の存在…記憶が…世界のあらゆる場所から消え失せる。」

そう、術の終了後に術者のを発動した存在の記憶があらゆる世界の人物、本、記録から消滅する。
発動者は誰だ！？


*SIDE*マグノリア

「ユリシス…様…」

「必ず、助けに来ると言ったはずだぞ。」

ユリシスはマグノリアが自分の名を呼んだ時に自分を術者として発動する召喚魔法を指輪にかけていた。

そう、たとえ、自分がもうこの世にいなくても、マグノリアを…そして、妹のオリフィアを救いだせるように。