灰簾石の頃/突き進む日

おっさんが稽古を付けてくれるとのことなので、お願いした。
やけにノリノリだった。

何で無意味な殺生なんてしなきゃいけないのか理解できないまま、アカネを持ち出してこの後めちゃくちゃ殺し合った。
殺すつもり、なんて言いながら手加減されてるのがわかった。
こっちは防ぐことに精いっぱいなのに向こうは簡単に読んでは切り返す。その顔は涼しそうだった。
俺を殺す隙なんて、幾らでもあるだろうに。

誘い入れて反撃する手も居れた方が良い、とは前に言っていたが殺す気なんて、なさそうだった。

手数の多い突きを間一髪で避けたところで、此方の槍を押し出したが手応えはあった。

……手応えは　あった
手応えが
あった。

俺が突いた先は、当たらず止まるような位置だった筈だ。

おっさんは自分から、アカネに刺さりに来た。

血を拭って、それからあのおっさんは笑うのだ。

俺を見る目が変わった。敵と見なした目だった。
酷い。こんなの、あまりにも理不尽だ。逃げ出したかった。まあそんな暇は無い。

仮に逃げようにもおっさんが追いついて、（信じたくはないが）本当に俺を殺してきそうだったので。

突いて薙いで。少し前まで精一杯のつもりでいたが、ついに限界を見た気がする。

おっさんの槍が傷を作った。

こ　ろ　さ　れ　る　？


何もないのに
訓練で
知り合いが
エンブリオが俺を
何もしてないのに
おれが死ぬときは
生きてる中でまだ
正気になれ
こんなつまらない日に
死に方が
違う


完結しない思考がどっと頭を過ぎった。
冷静さは、無かった。
駆けた俺は、間抜けにも足元を払われた。


無防備
終わる
死
背
刺す




身体を捩って、払うつもりで向けたアカネが指をすり抜ける。

まぐれだ、しかし何か弾いた音を耳にする。

直後に地に身体を打ち付けた。持ち直す暇は無かった。
距離を取る事はできないだろう。本当に終わる。そう思った。
だから、死んでも一矢報いるつもりで、おっさんが居るであろう方向に――アカネ（と思しき棒状のもの）を向きも判断できない内に掴んで、振り上げた。

リーチは足りなかった。向きは逆だった。狙いは勘だった。
重さから間に合わないと思っていた。

おっさんが両手を合わせると三つ又の槍と傷が一瞬にして消える。

けろっとしておっさんは言うと、模擬戦の反省会を始めた。













トラウマになるからやめてほしい。

　苦笑する様子に、イヌワシはかくりと首を傾げていた。どうしたものか、とでも言うように。

　しれっとそんなことを言っていた。

　目を逸らす彼とは対照的に。淡々とした言葉を紡ぎながら、彼女は真っ直ぐと見ていた。

木で作られた台に乗って、踊りながら歌っている女の子がいる
１曲歌い終わると、ちらほらいる観客に向かって話しかけ始めた