福ちゃんが目を覚ます。シルヴィさんはぽやぽやとした口調で、そう聞かれる。街にいる間はちょっと、実家に戻ってるの。そう答えた。
そして、心配そうに首を傾げるのをみて、どうしたのと聞いた。口ごもりながら、前にあった男の人は、話してた人にそんな格好でいいのかということを告げられる。
苦笑しつつ、仕方ないよ。と返すと、シルヴィさんのおいていった荷物を針や鋏、福ちゃんが大怪我をした時のためとおいて行った医療道具を取り出して、無言で私の着ていない方の服の裁縫をし始めた。
足りない部分の布地は背中の方をバッサリと切られ、長い部分も切って補った。
寒いかもしれないけれどと言って渡された服は私にちょうどいい大きさだった。
寒いのはもう感じないから、これでいいのというと、良かった。と笑うあの人にひどいことをしてしまったと思って、抱きしめてやる。

寂しかった？目が覚めた時一緒にいなかったでしょ。
少しね。でもいいんだ。きにしなくていい。
どうして
今の姿を見ていると

一瞬の間がある。続きを促してやる。この人は多分喋らなくなるから。

ヒナを僕の使い魔にして、そのままにしておくのは自分勝手で。それはただのエゴじゃないかと。そう思ってる。
…。
ヒナのことが好きだから、幸せになってほしい。だからね、自由に生きてほしい。

その言葉だけで幸せになった。頭を締め付ける茨が少しだけ緩くなったような気がした。抱きしめるのをやめ、笑顔を見せると、ホッとした顔であの人はポケットを弄った。

ヒナようやく笑ってくれた。あのね、あとヒナが寝ている間にね、これ、直しておいたんだ。首からかけたら、また壊れちゃうから、ブレスレットに紐の長さを調整しておいたんだけど。

朝からずっと探していた、紫色の羽飾りが腕にちょうどいい形に加工されている。勝手なことをしたかなとつぶやく目の前の少女は、不安そうな瞳でこちらを見つめている。頭をなでてやり、お礼を言うと、少女はにこりと微笑んだ。

多分、
私は私では
なくなってしまったし、
同じものも
作れないけれど
別の何かが
作れるんじゃないかなって
そう思う。

慌てているようなシアンを見て、ひらりと軽く手を振る。

全く足並み揃わない会話を煙草を吹かしながら聞いて、一息つくとまずサイサリスに視線を向けた。
動じた気配もない相手に気を悪くするでもなく、むしろどこか納得したという様子。

ひとりごとのように呟いてから、改めてシアンに水を向ける。

話をそらそうとする態度に真っ向から質問することはせず、話をあわせて落ち着くのを待つ。
ナユ、と名前が出たときに、後方に潜む気配が存在を主張するようにまた少し強くなったが、それもすぐに消えた
それから、ふ、と小さく笑い。

ニセモノならボロが出るだろ、と肩をすくめて軽く言うと、そっと相手の頭に手を伸ばしてくしゃくしゃと撫でようとする。

余分な茨をひきちぎった