(※あいも変わらず本編とはあまり関係ありません。
　 前回の続きとなっております。
　 前回自体続きなのでそれ以前の日記の方もどうぞ。
　 良ければ過去の日記とあわせてお読みください。)

「かくして計画の全ては頓挫し、
　水泡へと還り、
　大粛清が行われました。
　大粛清によって失われた国力を補い、
　他国への牽制として、
　大粛清の英雄を騎士団長に抜擢、
　英雄の名と力、そして……
　偶然にもこの国にきていた同盟国の力を借りて、
　他国の付け入る隙を無くし、
　王国は仮初ではなく真の平和を取り戻し、
　永く王の治世の元、国は治められたそうです。
　めでたしめでたし。ね。」
「いやー、実にいい美談ですねー。
　そして、同盟国も感謝の気持ちとともに恩恵を受けて、
　より一層反映しましただなんて。
　誰も不幸になってない！
　素晴らしい結果ですよね。
　ええ。
　しいていえば、大粛清受けた側が不幸になってますが、
　あれはもう自業自得ですから仕方ないですよねー。」
「同盟国になったのは、
　事が終わった後だけど、些細な問題よねぇ。」
「おやおや、辛辣ですねぇ。
　卵か先か鶏が先かって奴ですよ。」
「あら、台詞とられちゃったわ。
　ところでまだ商人続けてるのかしら？」
「続けてますよ。
　まぁ、ホラ……
　趣味は好きで続けるもの。
　やめるようじゃ趣味ではありませんからねぇ。」
「あら、それじゃあ足腰立たなくなるまで
　続けないといけないのね。」
「もちろん。
　しかし、またこのメンバーで集まるとは思ってませんでしたが、
　神のお導きでしょうかな。
　あれから１０年立っているのに、
　お美しいままで羨ましいですが、
　何か秘訣でも？」
「魔女だからじゃないかしら？
　残念ね。
　他の人に流用できるものじゃないわ。」
「本当に残念ですね。
　しかし、聖女の方を名乗らないあたりが貴女らしい。
　どうせ他の国での大きな出来事も貴女の仕業だったのでしょう？」
「あら、まるで私がやらかしたようにいわないでもらえるかしら？
　たまたまおきていた出来事に、
　そっと手を添えただけよ、
　あの時みたいに。」
「流石といったところでしょうか。
　いや、
　本当に敵対せずに良かった。
　大した人ですよ、
　本当に。」
「あなたの方こそ、
　あそこまで的確に動き回れるなんてすごいと思うわよ。」
久しぶりにこの国に立ち寄ったので、
旧交を温めるために屋敷を訪ねてみると、
懐かしい人もまた商品を売り込みにきていたらしく、
偶然であったのも何かの縁と応接室で会話を楽しむ。
ちなみに館の主は今ちょうど出ているらしく、
時間がかかるらしいので、
のんびり話が出来るというものだが、
おそらくはすぐ帰ってくるだろう。
今頃私達が着ていることを聞いて走っている頃だろうと予測しつつ、
メイドさんが入れてくれた紅茶と、
用意してくれたお菓子に舌鼓をうつ。
流石に高い地位について、
給料をたくさんもらっている人は違う。
遠慮なく楽しむのが礼儀というものだろう。
当人とて、
それをして怒る訳がなく、
むしろそれをいえば、
苦笑しながらも受け入れるだろう。
私のものは私のもの。
彼のものは私のもの。
といっても良い。
もっとも、
大半のものは私にとっては不要だから、
彼のものであるのだが。
そうこうしているうちに、
どたどたと足音が聞こえてくる。
どうやら、
私と商人さんの楽しい一時はこれで一旦終わりらしい。
「――来たわね。」
「ええ、おかえりになられたようですね。」
勢い良く開いた扉には、
ほどよく老けて、
重厚な雰囲気をかもし出し、
一人前ともいえる猛将の姿がそこにあった。
私と別れて、
この地で騎士団長から将軍へとたたき上げで駆け上がり、
傭兵としての経験に加え、
さまざまな権謀術数を乗り越え、
成長した一端……否、
超一流として成功した男がそこにいた。
……
なんというか、妙な貫禄がでているのがうけた。
「似合わないわねぇ。」
「第一声がそれか！？
　もう少し手優しい言葉があってもいいと思うんだがな……」
だが、内面……
性根の部分については以前と変わりないようでよかった。
あの時のようなぎらついた感じがなくなったのは残念だけれど、
まぁ、それくらいであれば、
普通に齢を重ねればよくあることなので、
気にすることはないだろう。
少しさびしくもあり、
嬉しくもあるのは、
まぁ、自分の知らないところで相手が成長していた感傷なのだと思う。
「あら、そんなに手厳しかったかしら？
　言葉を私は選び間違えたようね。
　訂正するわ。」
「……ほう。」
「似合わないというよりは寧ろ……
　え、何それ冗句？
　あなたそんな柄じゃないでしょう。
　流石にその冗句はハイセンスすぎて私にはわからないわ。
　ごめんなさい。
　かしら？」
「悪化してるじゃねぇか！？」
「ふむ。確かに……
　そちらの方がいいえて妙ですね。
　成る程。
　奥が深い。」
「そっちも悪乗りしてるんじゃねぇよ！
　というか、
　なんで同じタイミングで俺の所に乗り込んできてるんだ！
　嬢ちゃんの方はほんと久しぶりだからいいとしても、
　そっちはタイミング計ったようにしか思えねぇんだが。」
「良い推測ですねぇ。」
「だが、無意味よ。」
「ええ、実に。
　残念ながら本当に偶然なんですよ。
　魅月さんとあったのは私も随分久しぶりですし。
　ああ、そうだ。
　折角だから魅月さんにも何かプレゼントをかって贈られては？
　ちょうど良い機会ですし。
　いい物が入荷したんですよ。」
「ちょっとまて、
　久しぶりにあった割には、
　あまりにもタイミングや波長が合いすぎだし、
　それに――
　なんで本人の前でプレゼントの売り込みするんだ！？
　普通……
　本人のいない所でやり取りして、
　本人驚かせたりするもんだろう！？」
「で、ちなみにこれなんですけど。」
「あら、綺麗。
　いいわねぇ。
　いただこうかしら。」
「なんで俺を無視して話を進める！？
　しかもプレゼント前提じゃないか！
　まぁ、よほど高いもんでもない限り別にいいけどよ……
　どうせ金ためて、
　使い道もないしな……
　といっても高すぎるもんは駄目だぞ。
　ドケチだとか、
　貯めてる金があるならこの機会にぱーっととかいっても駄目だ。
　高すぎるもんをもらった所でどうせお前は喜ばない所か、
　実際の所迷惑にしかおもわんだろうしな。」
――商人から見せられたものは、
綺麗な蝶をモチーフにした髪留め。
実際の所そう高価なものではない。
金額はと目配せをして聞いたときに、
口の動きから読み取って確認済みでもある。
なので、
わざと物凄く高い額をいってからかえば、
商人の方もあわせてその額っていって煽るので、
払うか払わないか楽しめると思ったのだが、
傭兵さんもあの時から変わっていないようで、
即座にこちらのやろうとしている事を予想し、
釘を刺すことにしてきた辺りが、
懐かしく、満足した。
まだ、私の性格とかを覚えていたらしい。
まぁ、心身に染み付いてしまっている可能性も捨てきれなくはないが、
それはそれで、
私の事を刻み付けた証というものだろう。
「えー。
　いいじゃない。
　どうせあなたの金は私のお金みたいなもんでしょ？」
「もう依頼人じゃないからっていいたい放題のようだけど、
　流石にそれはいいすぎだからな！
　俺だけの金ならともかく、もう結婚してるよ、
　畜生！」
「そういえば奥さんにあってないからご挨拶しないと。
　愛人の魅月ですっていえばいいかしら。」
「やめんか！
　まぁ、後で――」
「そうそう挨拶といえば、
　ここに通される前に、
　仕立てのいい服をきたの金髪の超美人さんがいたから、
　つまらないものですが……
　っておいしいケーキ渡して挨拶したんだけど、
　ほんと美人だったわねぇ。」
「それが俺の奥さんだよ！
　分かってていってるだろ！？」
「もちろん。」
「あ、もちろん奥様へのプレゼントも御用意してますよ。」
「……もうホント性質悪いな、お前ら。
　まぁ、昔から分かってたことだし、
　そういう性格も嫌いじゃないけどよ。
　ま、心配せずとも両方頂くよ。
　どうせ既に俺の出せるぎりぎりの額を算出してるんだろう？」
「お察しが早いことで。
　いやぁ、これだからあなたとの取引はやめられない。
　まぁ、想定見積もりより大分安くはさせてもらいますよ。
　利益は細く長くが一番です。
　趣味ですし。」
「ああ、信頼してるよ。
　お前も、嬢ちゃんもな。
　裏切りだけは絶対にないのもまた知っているからな。
　嬢ちゃんは自分の味方である限り、
　あんたは自分に多少なりとも利があって、
　敵対しない限りは。
　で、嬢ちゃんは何しに来た。」
ペースが崩れやすい割に、
ペースを立て直すのも早い。
まぁ、だからからかいがいがあるのだが、
どうやらおちょくるのもこの辺りにして本題に入るべきだろう。
「旧交を暖めにきたのと、ちょっと了承を得ようと思って。」
「ほう。
　了承っていうと？」
「はい。これ。読んで。」
そう言って、
紙の束を差し出す。
受け取って読む傭兵さんは眉間にしわを寄せ始めた。
「あら、どうかしたのかしら？」
「いや、童話か？
　……っていうか、
　この内容にすごく身に覚えがあるんだが……」
「ええ、
　私達の出会いとあなたが騎士団長になるまでの話ね。
　素敵な美談だもの。
　読み物にしてよんだら、
　まるで自分のことじゃないみたいで面白いわ。」
「まぁ、それは同意するけどよ……」
「ちなみに後はあなたの許可があれば大丈夫なようにしてあるから。
　他の人からは全員許可を得たわ。」
そういうと、傭兵さんは商人さんを見る。
商人さんにあった時点で既に承諾は得ているので、
ゆっくりとうなずく商人さん。
この国の王様にも彼の奥さんにも承諾は得ている。
「……わざとか、わざと俺を最後にもってきたのか。」
「もちろん。
　逃げ道をふさぐのは常道でしょう？」
「全く……
　俺が栄華を一点に引き受けたのと同じ手段か。
　俺に報酬を支払い、
　契約を終わらせ、
　王と先に交渉しておいて、
　俺が王の下に行く頃には既にもらうもんもらって、
　この国から脱出してたもんな。」
「私になすりつけようと、もう手遅れだもの。
　それに……
　ここに残って騎士団長になってよかったでしょ？
　色々あなたが上手くやっていけるようお膳立ても整えたし。」
「ああ、本当によくもそこまでな。」
「でも、ま……
　傭兵をやめてそちらにいく覚悟は出来ていたでしょう？」
「ああ、
　出来ていたな。
　全く、
　俺が出来ていなかったらどうするつもりだったんだ？」
「英雄を傭兵として国が落ち着くまで雇われてたんじゃないかしら？
　多分、めんどくさい仕事大量に押し付けられてたから、
　素直に騎士団長になったほうが楽だったでしょうね。」
「嫌がらせか、それ！」
「昔のあなたなら、
　どちらにせよ望む所だったと思うわよ。
　結局のところ、
　どちらにせよ貴方はもっとも望む戦いを手に入れられたのだから。」
「……それをいわれたら、
　何も言い返せない、か。
　ま、ともかく、問題ねぇよ。
　だが――条件がある。」
「何かしら？」
「お前の名前が魔女になってる。
　どうせ、他の話もあるんだろう？
　読ませろ。
　お前が何をしてきたのかすごく興味がある。」
「あ、私も興味がありますねぇ。
　売り出しに協力しますから読ませていただけませんか？」
そして、出された代償も予想通り。
だから私はにっこりと微笑んで――
「もちろん、
　持ってきたから読んで頂戴。
　まぁ、あまり面白い話ではないわよ？」
「面白くないわけなんてないだろう。
　お前がお前である時点で、
　俺にとっては興味深くも面白い。
　――感想とかはどうしようか。」
「……しばらく逗留するからいる間に来てくれるか、
　それか……手紙ね。」
「分かった。」
そっと書かれた他の童話も纏めて傭兵さんに手渡す。
黙りこくっている商人さんに視線を向けると、
どうやら彼は言いたいことはいわれましたとばかりに肩をすくめた。
「で、連絡先は……」
「出版元でいいわよ。
　適当に手紙受け取りにいくっていってあるし。」
「……全く、
　神出鬼没な女だな。
　嬢ちゃんは。」
「――女はね。
　ミステリアスな方が魅力的なのよ？」
クスリと微笑む私に、
二人そろってそれでこそ私みたいな顔をする。
……なんだかんだで昔のままの私がいいだなんて、
どうしょうもない男達ね。
ひねくれてるのは自覚している。
けれど……彼等は知っているのだろう。
そんな私でも私らしさだけは決して失わぬ事を。
そんな信頼を大切にしていきたいわね。
本当に。

>ねこにゃーにゃー

ぬいぐるみを持ち歩いているからそこに居ると解るが…

実体は持って無さ気。結局気配と外部への干渉力だけでそこに居る。（なんて中途半端な復活！）