目を覚ました僕の視界に飛び込んだのはいつもの天井。
シアの言っていた通り、僕はいつものベッドで眠っていたようだ。

目を閉じ、身体の様子を探る。
多少けだるい感じはあるものの、傷はもう癒えているようだ。
身体に力を入れて起き上がる。
動かしていなかった筋肉がその錆びを振り払うかのように躍動した。


ふと隣を見ると、フェリオが椅子の上で寝息をたてていた。
どうやら看病をしてくれていたみたいだ。

撫でようとすると、その気配を察したのかフェリオは目を覚ました。

寝ぼけ眼だったフェリオは僕の顔を見て文字通り飛び起きる。

フェリオはそう言って部屋を飛び出す。
そして少しして、他のみんなを連れて戻ってきた。

そんな感じでしばらく雑談が続いた。
それが落ち着く頃に、僕は一息入れてみんなの注目を集める。

目覚める前に決めた事。
それは今この時でなければならない、と思っている。

突然の事に首をかしげながらも頷くふわもこ達を見回しながら、僕は話を始める。

これまで隠していた自分の事、転生の事、シアの事、そして僕達の新しい目的の事。

ひとつひとつ、ゆっくりと、自分自身で確かめ直すかのように――




・〜・〜・〜・〜

一通り話した僕はふーっと一息つき、ふわもこ達の様子を窺う。
僕の話の一つ一つ、ふわもこ達はその全てを真剣に聞いてくれた。


やがて、ふわもこ達は示し合わせるように頷き合い、カイルが代表するかのように口を開く。

僕はあっけにとられ、ぽかーんとした顔をする。
そんな僕の様子にしょうがないなぁといった顔でシェリーが声をかけてくる。

僕はふわもこ達に笑顔で礼を言う。

ふわもこ達に出会えてよかった。本当に。

ふわもこ達に急かされた僕は慌てて、精神を内面に傾ける。

Sequence ”Realize / System Avatar”



名前の選出及び設定――既定のものを適用。

容姿の選出及び設定――既定のものを適用。

性格の選出及び設定――既定のものを適用。

拡張能力の付加――完了。

内界/外界リンク――完了。

システム『リィシア＝ノール』の具現――完了。



Sequence ”Realize / System Avatar”――正常完了。




・〜・〜・〜・〜

『具現』シーケンスを終え、シアが僕達の目の前に姿を現す。

周りを見回したシアはにっこりと笑顔を見せたかと思うと光に包まれる。
そして、光の中から人間の姿となったシアが再び現れる。

シアはふわもこ達に向き直り、ちょこんとお辞儀をして挨拶をする。

挨拶と自己紹介を終えたシアは再び光に包まれ、妖精モードに戻る。

ふわもこ達はわっと駆け寄り、賑やかに話し始める。
予想以上に好評で少し驚いたと同時に、兄として少し誇らしく感じた。

僕はその様子を横目で眺めながら窓から外を眺める。
今日もいい天気みたいだ。




・〜・〜・〜・〜

部屋の中に視線を戻すといつの間にやらフェリオがそばに来ていた。

ふわもこ達に恩を返したい、という言葉は胸の中に納めておく。
だって照れくさいし。

笑うフェリオを僕は優しく撫でる。
そう、新しい目的はあるけど今は目の前の一揆も重要だ。

もう少し休んで、また再びあの庭園に挑むんだ。




・〜・〜・〜・〜




[？？？]




――あれからどれくらい歩いただろう？

直感通りにあっちらこっちら。

それでも周りはずっと白いままだった。



……いや、違う。

僕は視界の中に一点だけ白以外があるのを見つけた。

僕はそこに向かい歩く――自然と足早になる。



そこにあったのは赤い石のはめ込まれた棒だった。

よく見ると細かい傷やでこぼこしているのが見て取れた。

僕はその棒を手に取り、少し考えた後に地面に立てて手を放す。

当然棒は倒れる。




カコン――




倒れた棒の音は白い世界に、そして僕の頭の中に響いた。

音は頭の中で共鳴する。

共鳴した音は頭の中の靄を晴らしていく。

靄は晴れ、僕は僕自身を取り戻した。



僕は51人目のルーデル――ルーデル＝カーシィだ。



あの時僕は直感として感じた領域に足を踏み入れようとしていた……そしてそれが最後の記憶だ。

ここはその踏み入れた領域なのだろうか、それとも……？



……考えていても仕方ない。

僕は棒を手に取り、倒れた棒がさしている方向に再び歩き始めた。




[No.51:Rudel=Cursy]