『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.09.08.22:31、とある施設にて――


　人間の役に立つために生まれたのなら、自身にとって
有益でなくとも構わないのではないか。それが、
人間にとって有益であるのならば。
　何だかんだ言っても、ロボットは人間の道具に過ぎない。
道具に感情は必要ないのだ。
　では、何故に感情を与えるのか。一部の研究熱心な
人間達はロボットと意思疎通が出来ると本当に
信じ込んでいるからだ。
　彼等自身がよく理解している筈だ。それは、偽りの感情だ。
そこにあるのは感情ではない。自身に与えられたプログラムに
従い、人格の設定を元に感情という結果を出力しているだけだ。


　2077年12月24日のデートの先約の話をせねば。この間の
デートの先約について詳しく聞いていない。約束したが、
詳細を聞く時間はなかった。彼女を迎えに来た
少女によって聞きそびれてしまった。
「この前の話だが……」
　デートの話を切り出そうとした時、不意に電脳の世界が
大きく揺らいだ。揺らいだのは一瞬だった。
「外部からの干渉か？」
　一部の空間が歪み、空間にぽっかりと黒い穴が開いた。
何かがこの世界での実体を持とうとしていた。
　演出だ。誰がこの世界へやって来たのだ。
「彼が来たようです」
「彼？」
　資料で見ただけの情報だが、かつて活躍した部隊の
隊長機を人間のサイズにしたロボットの姿だった。
赤を基調とた装甲の機体で全体的に尖った特徴の機体だ。
　ロボットは片手を上げ、男の声で挨拶した。
「よう、魔女のお嬢さん。それと……誰？」
　少しの間が開いた。目の前の機体を検索、開示された
情報から相手が誰なのかを調べる。
「お久しぶりです。ディーバ。こちらは私の知り合いの
ロボットのウィルさんですわ」
　ほんの僅かな時間に少女が簡単に紹介する。ここでの
容姿も名前も現実とは異なるものなので、問題はない。
相手もそうだろう。
「あぁ、ロボットか。道理で警戒されているわけだ。
俺はディーバ。見た目はこんなのだが、本体は人間だ。
宜しくな。ロボットのウィルさん」
「ウィルだ。宜しく」
　中身がロボットの人間と中身が人間のロボットが握手する。
相手の手は無骨な作りの手であるが、動きは滑らかで
人間の手のように動いていた。映像が滑らかに見せているのか、
本来のロボットも滑らかな動きをするのか、どちらなのかは
知らないが、よく動くロボットのようだ。

ごちゃごちゃ愚痴りつつ進んでいる。

ぺちゃくちゃ喋りながらうろうろしている。