少しずつ集まってくる情報で、王へのまた新たな道が見つかったと、聞いている。
徐々に徐々に、けれど確実に、一揆という目的が果たせる日が近づいていて。


道すがら。歩く二人の仲間の姿は、少し前までの気配は一切なく。
よかったと。安心する半面で、別の事がよぎる。
特に二人は同じ世界から来たから、余計に、
己のこの思いがきっと、強い。
じわりじわりと、土に染み渡る水の様に広がるそれを、口に出してしまおうか。

ゆっくり唇を開く、けれど。
声にはならず、口を閉ざす。


思ったことを、昔の様に言えなくなったのは、きっと人と触れたから。
それは決して悪い事ではなくて。
他者とかかわりあうことで、多分自分が空気や、場を察知できるようになったからなのだろう。
エンブリオ達の言葉を借りるなら――成長した、ということ。

人はきっとみんな、こんないろんな感情を抱えているのだろう。
閉ざして、飲み込んで。
それは少し、苦しいなと思う。


分かりきっていたこと。
とっくにわかっている感情。
それでも口に、出せなかった。
当たり前のこと過ぎて、尋ねることさえ、できない。
音として聞くことを、きっと、どこかで、怖がっている。

――一揆が終わったら、元の世界に帰られるんですよね。



『サヨナラ』が。来る日が近づくのが、少しだけ怖くて。
まだ旅が続けばいいのにと。不謹慎なことを少しだけ、思って。
二人の影を、追った。

王を見、死者を見、それから黄昏髪の彼女を見。一歩、歩み寄る。

ぽん、ぽん。と彼女の手を叩いて。
自分達なら、出来る事。そう、二人とは少し違う言葉で。

クローシェの嬉しそうな笑顔をどう思ったのか。
少し考える素振りを見せた後、考察を放棄したかのような意見を返す。

水筒の蓋を受け取りながら、疑問に対し回答を始める。
一息置いたところで、折角なので頂きますと言ってポットの中身を催促した。

あっけらかんと言ってみせる。
自らの胸元に手を当てると、

そうであったらとうに命を絶っていると、
やはり口振りは当然に軽い。

言葉をゆるめて、
綻ぶ彼女の、顔を見る。

するすると。障害が無くなり、元の道を行く彼らを見送る中、
不意に、はっし。と。行きかけたひとつの残滓を引き寄せる。
とても自然に。風で飛ばされた布の端を掴むように。