告げられた言葉に胸を貫かれて、立ち尽くす。

胸の中心から、得体の知れない震えがじわりと広がるような感覚。
畏れに似た何かが身体を駆け巡り、私という存在を捉えていたはずの自分自身の指が、行き場を見失って空を切る。
掴まえていたはずの綱からもぎ離されて、彼に、向き合わざるを、得ない。

好きだ、と。

自分に向けられることは、生涯ないだろうと思っていた言葉。
愛も好意も、私とは関わりのないところで、美しく在るものだと信じきっていた。
忌み子として生まれた私が、まして罪を背負ったまま、そんな美しいものに触れることはできやしないと。

彼は、私の罪を知っている。
左の腕に焼きついたしるしのことも、私の弱さも。

それでもどうして、そんなふうに言えるのだろう。
どんな強さでもって、そんなふうに、言ってくれるのだろう。

切々と連ねられた言葉の端々に、痛むような真剣さを掬い取ってしまって動けなくなる。

私はそれを知っている。
知ってしまった。
届かないかもしれないと、そう思いながら忘れることのできないもの。
傷に似て、無視もできない熱を持ってそこにある、もの。

誰かを想うのは、こんなにも痛く、つらく、おそろしい。

自分の内側のなにもかもが変わってしまうようなものを胸に抱えて、秘めても手渡しても、きっと、思う通りにいくはずもなくて。
それでも言葉にするだけの勇気を示してくれたことが、嬉しいのか怖いのかさえ、今はわからない。

もとより罅割れていた胸の氷が、震えて。
沈めていたものが揺り起こされる。

彼が、私に差し出してくれたものと似た、何か。

同じかどうかはわからない。
私はそれを、もうずっと、取り扱いかねている。

私はまだ、どんな答えも知らない。

そう言ってプルもまた、梨をひとかけら口にした。

顔を背けた燈子の顔色を伺うように、顔を近づけた