『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.09.08.22:21、とある施設にて――


　電脳の世界。
　何もない緑の草原と白い雲が流れていく青空。
不定期的に風が流れてくる。
かつての自然豊かだった惑星『アース』の姿だ。


　特に任務もなく、エネルギーの消耗を抑えるために
眠りにつこうとしたら、少女の呼びかけがあった。


　その世界のウィザードの少女はそこにいた。電脳の
世界におけるイメージの姿だ。お互いに姿を知っているが、
警戒しているのだ。
「御免なさい。私のせいで怒られたでしょう」
　少女と別れた後、騒動に巻き込まれた。偶々
居合わせたクリスと、情報収集の為にクリスに
同行していたぽちにより騒動は解決したが、
遊園地にいたことがマスターに知られてしまった。
「……いや、君のせいじゃない。知人の休暇を
知らなかった俺が悪い」
　偶々居合わせたと聞いたが、尾行されていた
可能性もある。特にぽちの場合、色恋沙汰に
関心があるから、怪しいものである。
尾行されていたとしたら、狙いは少女との関係しかない。
「ところで……きゅいはちゃんと動いているのか？」
　俺の責任を少女が気に病む必要はない。別の話を
振ってやることにした。
「ちゃんと動いていますよ。きゅいは私の名前も覚え、
名前を呼んでくれますわ」
　少女は手の中の本を開いた。四角いスクリーンが
現れ、きゅいが飛んでいる映像が流れる。
　きゅいが小さな翼を動かせて飛んでいた。すーっと
旋回して窓辺に降りた。
　窓の外は建物の側にあると思われる植物の葉、
青空と海、いくつかの小島が見えた。
　惑星『アース』の南半球だ。特徴的な植物の葉が、
南半球の島国を連想させた。
「この子、窓の側が気に入っちゃったみたい。
お日様が出ているとくるくる踊るの。お日様が隠れると
座り込むのよ」
　映像が切り替わり、踊るきゅいと気分が沈んだかのように
座り込むきゅいを見せた。
　光エネルギーの有無だ。ある程度の光が貯めやすいと
踊りやすいようになっている。
「この子はお日様が好きなのね」
「そうだな。太陽が出ていると踊りやすくなるぞ」
　日光が好きなわけでもない。機能の設定で
踊りやすくなっているだけだが、それを言うのは止めた。
　きゅいは其程高性能なロボットではない。思考も
ある程度のパターンがあるだけだ。機能の設定が
きゅいの性格付けに役立つのならそれでいい。
　少女が楽しいのならば、それでいいのだ。