一揆開始から〜　数ヶ月と数日前:
目の前に広がる光景を眺めるだけで、筆を持つ手が震える。
一面を覆い尽くす氷。全てが凍りついた世界。
ここが、すっかり私の部屋となってしまった商店の倉の中とは、誰が思うだろうか。
つい数刻前までは、資材や貯蔵商品が並び、他の倉とは何も変わらない光景だったはずだ。
まあ、私が使う生活用品がある…という点だけは、元から他とは違うだろうけれど。

信じがたいことだけれど、この風景は私が作り出したもの…らしい。
私が一体何をしたのか、はっきりとは覚えていない。
確か、〓〓〓〓にあんなことを言われて、この倉まで逃げ込んできた所までは覚えてるのだが…そこからは記憶が曖昧だ。
確かに、手や色々な部分がいつもより冷たかった。それに気付いた時に妙にけだるかったから、何かはしたんだろう。

これからどうするか…　ただでさえ奇異の目で見られていたが、今はなお更、化け物を見るような目で見られている。
もう、この街には居られない…かもな。



一揆開始から〜　45日目:
武器を新調してからここのところ、とても調子がいい。
今日も現れた相手をあっという間に倒してしまった。
この調子なら、もう少し相手を探しても大丈夫か？
あまり慢心してはいけないのだろうけれど…

良し、が返った次点で、言葉のとおり無遠慮に手を掴む。
求められたことを守るように、黙ったまま指先と付け根の温度差を確かめたり、掌の様子をうかがったり、痛くならないよう気を配りながら体表の堅さを調べたり。

握られながら、掴まれた箇所の感覚に興味を示しながら答える。

　　　　　　──人もをし　人も恨めし
　　　　　　　　　　　あぢき　　　なく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世を思ふ故に
　　　　　　　　もの　　　　　　思ふ身　　　は───