城の裏手を覆うように聳え立つ大きな大きな山、その山には人の十何倍の大きさの木々と、木々から伸びる枝木に木の葉により
日差しは遮られ、多くの小さな星と蛍が光の代わりとなり道を示させる。
自然が豊かでもあり、幻想的な雰囲気が漂う山中で、この場には似つかない姿の影が二つ。
どちらも長身でどちらも歩く度に金属音と機械音を鳴らさせる。
モンスターが蔓延るこの世界で音を発生させるのは。自身の位置を教えると同意である。
余程戦闘に自信があるか。無能な馬鹿でないとわざわざと音を鳴らさせようとはしない。
既に山の中腹までこうして徒歩で来てるのだ、彼らは無能ではなく戦闘に自信がある者なのだろう。

一体の機械、名はメカエキスと呼ばれる機械が愛用の軽機関銃形式双銃を指に嵌めてクルクルと回しながら声を出す。
低音で機械音混じりの声音だ。

なぁ？モノリスと声を投げ渡す相手は濃い茶色と橙色を混ぜた鎧を纏う者。

問い掛けられた言葉に対しての口数はとても少ない。

そんな漫才を繰り広げながらメカエキスは突然と黙り始める、持っていた双銃もホルスターへと仕舞い。
突然黙ってどうしたとモノリスが眼で問い掛ける。

続けて数は1。身長は低め。恐らく女性と坦々に続けていく。
機械だからこそ感知が出来たのだろう。最も、この世界では機械以外にも超人じみた者が存在するが。

何かを閃いたかのようにメカエキスは少しこの場で休もうぜとモノリスに声を掛けた。
急いでいるわけでもない、首を縦に振り彼に大人しく従う。


***

ボロボロの黒衣に包まれた少女は一人、歩を進める。
身より少々大きい大鎌を肩に担がせながら、ゆったりとした歩幅で星屑の山を進む。

フードを被り顔を隠しながら周囲を警戒をしつつ、銀髪の少女は疲れも汗も見せずに歩を進ませる。
やがて歩いてる最中に硝煙が風で運ばれ鼻腔を擽らせる。山の風は強く流れも早い。
近くで音が銃声が響けばわかるはずだ、聞こえないという事は余程先で銃撃があった。そのように思うべきだろう。

それから暫く歩いても特に何も反応もなく、銃声も聞こえず戦闘が終わったのだろうと思った矢先に

パシュ

と軽い音に男性の声が一つ

道の外れから聞こえて来た

その声の主が何者なのか、確かめるために鎌を構え警戒を続けながら顔を覗かせる。

――――見えた者は

大剣を携えてる鎧の傍らに倒れているのは獣だ、不器用ながら真っ二つに切られているのがわかる。
そして振り向いて来る謎の者、鎧にしては小さく中に人がいるとは思えない。
腰には銃器が二丁、他に武器はないようだ。マントを翻しながら此方に向かう。
一定の距離まで近付いてくれば歩を止め、唇がないのにも関わらず、何処からか声を出し始めた。

殺気も何もその類のモノは感じない、一揆衆の者なのだろう。

後半の怒声と共にとある方向へ指したメカエキスの指の方へ視線を移すと
6,7頭のイノシシやシカやモンスターが半分にされて積まれていた。

こんな獣だけで美味い料理が出来るはずがない、冒険をしているのにも関わらず知識がないのかと。

メカエキスと名乗る者が言うには自分達は、他の一揆衆と比べて少数行動だ。
人数は多ければ多いほど便利だし、戦いでも役に立つ、それで一人で行動をしているのであれば誘ってみよう、と。

モノリスと呼ばれる甲冑を身に纏った者は、身の丈以上の大剣の血を払う。
兜の隙間から見える一点の赤眼が此方を見据えさせる。

それだけ言うと大剣を担ぎ、山頂までの道へ進む。

先に行ってしまったモノリスを足早に追うメカエキスを目で追い、フードを脱いでから一言。

不安は積もるが今は彼等と共に行こう。

がしゃり、と剣を背中にマウントしながら答える。

それからされた問いかけに、ゆるりと首を傾げた。