「顔色……悪いわよ。大丈夫……？」

心配そうなユメルの声は、すぐ側で発せられたはずなのに、どこか遠くで聞こえる。

軽く首肯し、また思考の沼へと沈んでいく。



私は怯えていた。

ここは……同胞たちを傷つけたあの場所。
王に従うかのようにこちらに向かってきた彼らの姿を目にしたところまでは覚えている。
しかし次の刹那、私が目にしたものは傷だらけの彼らだった。

彼らを傷つけたのは私だ

認めたくない事実が重くのしかかる。

同胞たちが倒れている姿と、あの日の光景がオーバーラップする。
そして思い出せない「何か」

でも「それ」を思い出そうとすると、目の奥がチリチリして。
私の無意識が、思い出すなと警鐘を鳴らしているかのようだ。



ふと目を隣に向けると、そばがき嬢と鵺丸氏が談笑している姿が見える。

もし、また理性を失うようなことがあれば……彼らをも傷つけてしまうのか？

私は、どうすればいい？

思い出すべきか？　目を背けているべきか？

答えが出せないままの私の前に立ちはだかったのは、猿と心を通わせる不思議な男だった。