午後、進行も一段落し、シュガーとアニマは王城の空き部屋でテーブルに腰掛けてくつろいでいた。アニマはへーとかふーんとか呟きながら独りで新聞を読んでおり、シュガーは新品のオープンフィンガーグローブを眺めて悦に入っているようであった。そんな静かな部屋に青白い鬼火が立ち上る。

あまり関心のなさそうな安徳帝の霊に、シュガーはいえいえ聞いてくださいよ、と、新品のオープンフィンガーグローブについての解説を始めた。そのオープンフィンガーグローブは昨日急ぎ職人を探して作製を発注した新品である。「奇妙な水晶像」を素材に作られ「魔法３」の付加が乗っており、また、「鏡の欠片」により光特性５も付加されているという。魔法には魔力増幅の効果があり、そして光特性により怨霊の雷の威力を高める。そのグローブはシュガーが久しく望んでいた単発火力の出る武装なのであった。

安徳帝の霊もシュガーの自信に満ちた解説に、今後の見通しの明るさを感じたのか、うむうむ見事な手回しじゃ、と、シュガーを褒めるのであった。

対してアニマは新聞から目を離し首を傾げていた。シュガーと安徳帝の霊がアニマの様子を伺うと、アニマは新聞「一揆日報」の「素材発見速報」中の表の一角を指差した。

アニマの指先とシュガーと安徳帝の霊の視線が交わるその一角には、次のような文字が並んでいた。

「永久蝋燭、強度110、武器に魔法5の付加が判明」

シュガーの顔から表情が消え失せていた。シュガーはのそりとテーブルを立ち、ごそごそとリュックから一本の蝋燭を取り出すと、蝋燭をテーブルの上に立てた。シュガーはアニマと視線を合わせるわけでもなく、呟くようにアニマに尋ねた。

シュガーは誰にも顔を合わせたくないとばかりに両掌で顔を覆う。いつになくSHOCKを隠しきれないシュガーに安徳帝の霊とアニマが心配そうに顔を見合わせていると、今日も今日とて冥府から声が届く。それは秋空のごとく明るく能天気な声であったが、その能天気さは傷心のシュガーをえぐるかのごとく爽やかな声であった。

シュガーは顔を両手で覆ったまま何も言わない。シュガーの耳元は冥府や隠世からの声がひっきりなしに聞こえてはいたが、それよりも何よりも、己の軽率さを攻める内心の声のほうが大きかったのである。

シュガーは怨霊と会話をしているようです

シュガーは怨霊と会話をしているようです…

シュガーは時々意味不明なことを呟きますが、
　怨霊と会話をしているのです。気にしてはいけません。