他愛もない。無言で倒れた兵士から金品を物色する。人間の目玉は薬になるのか。血液くらいなら少しもらってもいいだろう。ナイフを取り出す手を畜生が止める。
「放しなさい。」
苛立ちを抑えた声で言うと。唸り声とともにグロテスクなものがじわじわとあいつの背中から見える。ぞっとするような怖い目で私をあいつは睨みつけていた。身の危険を感じ、ナイフをしまうと、あいつはホッとしたように体の力を抜く。するするとグロテスクな茨も縮んでいくのを見て、ホッとした。
「どうしてそんなことをするの。」
はっきりした透き通ったソプラノの声が私に問いかける。水色の瞳はグロテスクな姿になっても今もなお水のように透き通っている。気に食わない。
「お嬢様のためですわ。」
「よくないよ、もっと良い方法があるはず。」
何をすると言うんだ。お嬢様をなにか具体的に助ける方法があるというのか。怒りを抑え、微笑みながら聞いてやると、下を向いた。庵がないことくらいはしっている。
「…ええと、白雪姫とか眠り姫みたいに―」
「ば、ば、ば、馬鹿ですの！？？！」
「みんなが幸せになる方法、キズつかない方法を探していくのがいいって、何やってるの？」
純粋な奴は嫌いだ。調子が狂う。
「ともかく、人狩りは駄目だよ。相手にも大事な人が・・・。」
納得していない私の顔を見て、首を傾げ、肩をすくめた。しばらくして、続きの言葉を私にいってきた
「福ちゃんが喜ぶわけないよ。嫌われたいならどうぞご自由にアタシは知らなーい。」
本当に、本当に嫌なやつ嫌なやつ嫌なやつ！

「ねえ。私の事嫌い？」
決まっている、即答すると寂しそうな顔をしたが知ったことか。
「じゃあ、どうしてアタシを助けたの？」
なんとなく、多分そう。気まぐれ。