Vanetta's Diary - Page.43



小さな屋敷を進み、最奥に至り、大扉を開く。
天蓋付きのベッドとそこに佇む人影を視界に、鎧に身を包むギラを先頭に近づく。


ベッドに臥せる少女がその力強い眼差しでこちらを睨み、名乗る。
前王の娘、オリヴィアであると。
そして彼女が両手を前に差し出し、何事かを呟くと──

強い力を感じ散開したその直後、光の柱がその場を打ち据える。
強烈な眩さに目を閉じ、そして開けた私達３人の前にそれぞれ、
純白の甲冑を身に纏い光り輝く槍を手にしたエンブリオ、ヴァルキリーが姿を現した。

「あなた方は、私達が争う相手ではありません。……しかし」


「……見定めるべき、相手です。力を持つべきか、否かを」

　「力を求めるのであれば、姫に、私に、その力を示しなさい」




──結論から言えば、ヴァルキリーの強さは
既に一ヶ月以上このメルンテーゼで戦いエンブリオの力に馴染んだ私達の力には及ばなかった。
私達の３人ともそう危なげもなく勝利を収めた。
さりとて恐るべきは私達が相手取った３体のヴァルキリー、その全てが恐らくは彼女のエンブリオであった事。
既に数十の位階を数え数千に登る単位のネクターを取り込んだ私のドレイクでさえ、ここまでの力は持たない。
ましてやそれを複数。まさに【見定める為】の戦いだったのだろう。


３人共がヴァルキリーを打ち倒し、オリヴィアを見る。
彼女は不敵な笑みを浮かべ、こう言った。

「……素晴らしい暴力ですね。このくらいでないと」

「我が父、前王は新王にその座を譲る式典の後一度も戻らず、その姿は私も見てはいないのです。
　あなた方一揆勢の狙いはただパラダイスのみなのは知っています。確かにその力があれば……

　……ついでで良いのです。何かの折に父を見かけたその時は、私に報せていただければ……

　ヴァルキリー。この者達の内に相性の良い者が居るでしょう。付き従いその力を振るいなさい」

　「畏まりました。我が力は我が主の為に」



　…　…　…　…　…

ちょっと皆から離れた場所にて