それは偶然だった。

ユメルと離れて山でひなたぼっこをしているとき、私に何者かに襲いかかられた。
山賊とは違った雰囲気を纏っていることから、同じ一揆参加者であると判断した私は、
できるだけ相手を刺激しないように、のんびりとした声で、王の手先でもエンブリオでもないことを告げた。

やはり魔物と勘違いしたらしいその冒険者は語った。
私によく似た生物を森で見かけ、襲われたので這う這うの体で逃げ出してきたと。


そのことばを聞いたとき　胸に湧いた気持ちは　喜び　だったように思う。


遠い異郷での同胞たちとの再会、それはきっと喜びにあふれたもので。

彼らはこの自然豊かな地で、のんびりと暮らしていて。

「あんな」狭い世界で……囚人のような存在ではなくて、自由を満喫していて。

そしてその中に私とユメルも……融け込んでいて。


ああ、それはなんて幸せなことなのだろうか。

私はいてもたってもいられず、ユメルを連れて森へと駆け出したのだ。

私は……冷静さを失っていたのだ。



私によく似た生物を森で見かけ、襲われた


なぜ気付かなかったのか。


そこに自由などはなかった


奪われたのだ。


脳裏によぎるあの日の光景



体の奥底から 湧き上がる怒りと咆哮




そして「私」は眠りについた。

パンダバンヤは無言で己と似た生物たちに向かっていく。
ユメルの声など聞こえないかのような素振りで……

グリズリーはパンダバンヤと敵の間に躍り出た。
まるでかばうかのように……

ガアアアアアアア！！！！


雄叫びは悲しみとやり場のない怒りに満ちていて。

無感情に襲い掛かってきた彼らは……
王の捨て駒と化した彼らは……そこにはもういない。

サラマンダーの少女の目から、一粒の涙がこぼれた。

もふもふもふもふ