「ウーン、何か違ったカシラ？」

　げに恐ろしきは魔女の秘薬か。

「よもや元気ハツラツを通り越して枯れてしまうとは。返せ、俺の春を返せっ！」
「ンー、無理ネ」
「まじか！？」

　おぉぅ、ぷりーずかむばっくまいセイシュン！
と、がっくりうなだれたら腰に来た。あかん、これは動いちゃダメな奴やで！？

「ウソ。そんなに長持ちしないワ。多分もっても２〜３日くらいカシラ？」
「他の薬を試すよりは自然に戻るのを待て、と？」
「――試してもいいケド？」

　床と見つめ合いながら沈思黙考。
沈黙を理解と受け取ったのか、お大事にネと言い残して女は立ち去った。
　とりあえずどうしよう。腰が……動けぬ。

　＊　　＊　　＊　　＊　　＊

　天の月が赤く染まる。
それは羅睺に噛まれた月が血を流すようにも見えた。

「オチミズ？」
「そう、ツクヨミの変若水だ。確か城の妖精が使っていた」
「あぁ決着つかなかったアレですか」

　布団を抱える姿勢が安定する。
目の前には南瓜を内側から食い破った案山子の顔。
地味に手が加えられていて、すっかり万聖節対応だ。

「そうなると、いよいよ私もリストラですかねぇ」
「別に自分で使う必要はない、それに」
「それに？」
「木村（キキーモラ）は悪くはないんだが他が微妙。健太郎とどちらを取るか、か」

　健太郎とは山で確保した人馬だ。
流石に３度出てくると、何か因縁めいたものを感じたので連れてきてしまった。
まぁ使える技は悪くないし、何より畑を耕すに馬力は重宝する。

「差し当たり、そろそろ山の王は冬眠の時期だ。彼にお帰り頂く」


　

　少しの間、目を伏せて黙考する。

メイベルはかぼちゃをペタペタさわったり持ち上げたりしている。
※小さくなった状態でお返事します。

そういってメイベルはお辞儀した。

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ひとしきり値踏みするようにロックを見回してから

紅と蒼。二つの瞳で妖しくロックを見ながら。