『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.08.25.15:16、とある施設にて――


　乱数に任せることもない。複数の施設を有する遊園地が
無難だったのだ。
　午後は少女が行き先を選び、遊園地を選んだのだった。

　そこに電脳の世界の大人びたウィザードはいない。
いるのはころころと表情を変え、無邪気にはしゃぐ
少女だった。


　人型ロボットの不便なところだ。人間と同じように
食物を食べられない。中には人間と同じ食物を摂取
出来るロボットも存在するが、無駄な機能の上、
かなり高価なロボットになってしまう。特定の
機関での使用を前提としたロボットでない限り、
使用目的とコスト、機能が見合わぬロボットになる。

　清涼飲料の不純物は問題ない。一杯の清涼飲料で
少女のティータイムが終わるのを待った。
「ミライさんも食べてみる？」
　フルーツパフェの果実を匙で掬って、こちらへ
匙を向けた。
「美味しそうだが、俺は一部の水分とロボット用の
食品以外は補給出来ないんだ」
「あら？　そうなの？」
「残念だけどね」
「人型だから食べられるのかと思ってました。
ロボットさん全員が食べられるわけじゃないのね」


　グラスの中の氷が音を立てる。少々の酸味の
成分と甘味の成分がほどよく混ざった清涼飲料は
まだ半分ほど残っている。
「設定された性格と嗜好、一般的反応から、その都度
感情の度合いを判定する。今の状況は
そこそこ面白い、楽しいに分類されるもの……と、
俺の感情は判断している。楽しい状況なんだ」
「ふぅん？」
　少女が匙を置く。
「冷静に分析されているようですが、それは
感情と呼べるのかな？」
「俺は……呼べないと思う」
　淡々とプログラムの処理をして、感情という
結果を出す。その一方で処理を客観的に見ている
自分が居る。
「ロボットであることを意識しすぎて、
感情も処理の対象としてしか見られないのかな？」
「？」
「ミライさんは深く考えすぎなのではないでしょうか？
与えられた命令の処理でも、それを素直に感情と
受け取るなら、それが疑似的なものであっても、
感情となるのではないでしょうか」
「素直に受け取る？」
「今までだって疑似的感情の動くままに、
行動してきたでしょう。それでいいではありませんか。
疑似的でも、ミライさんにとっては、それが
ミライさんの感情なのです。ロボットであること
意識せず、感情を出しましょう。だって、貴方は
感情があるロボットですから」