―――しらたまさん。

奪ったしらたまさんを前に、黒艶の雷華ことラインは途方に暮れていた。

事の発端は先日デュエル。
1人山道を歩いていた学生らしき少女にお灸を据えたところ、しらたまさんが引っ付いてきたのである。
別に奪いたくて奪った訳ではない、気が付いたら絡み付いていたのだ。

開戦時には「なにガン飛ばしとんじゃボゲェ！！」と、威勢を張っていたしらたまさんだが、今となってはすっかり内気だ。
あれは虚勢だったのか、あるいは情緒不安定なのか。割と後者な気がする。

とにかく、このしらたまさんをどうしたものか…、ラインは途方に暮れているのだ。



―――そうそう、しらたまさんは蛇である。
妖蛇と言った所だろうか、人の姿にもなれるらしい。
既に雷蛇を引き連れているラインにとって、キャラ被り甚だしい。

双蛇って響きも良いな。

…少し厨二心に惹かれる物があったものの、やはり今更の路線変更は厳しい。



―――ちなみに、しらたまさんは鎧である。
身体に巻きつけろというのだろう、なにそれエロい。
元の持ち主である女学生に巻きついていた時は、その雰囲気も相まって似合っていたのだが、流石に自分に巻きつかれると困る。

いろんないみで。

そもそもしらたまさんは防御4/防御4である。
不滅持ちである自分にとってこれ程不要な付加はない。
LV4だからフロスで逆境に変える事も出来ないのだ。



―――そして、しらたまさんは血塗られた蟹で出来ている。
しらたまさんの半分は血塗られた蟹であり、残りの半分は立派な毛皮である。
合成強度は21であり、別段高いわけでもなかった。
そもそも、こねくり回そうにも自分には合成技術が無い。
合成枠は装備合成や特殊合成に必要であり、わざわざしらたまさんの為に費やす余裕などないのだ。



―――強さ、しらたまさんの強さは719である。
語呂合わせを考えてみたが特に思いつきはしないハンパな数値だ。
これは取引に使えるのだろうか？

………無いな。

1人思い当たる節はあったが、彼女の装備もしらたまさんより付加が良かった。
やはり防御4の2連装はネックである。せめて物防魔防なら良かったのだ。



―――かばやき、しらたまさんのかばやき。

………食材ではない。
実に残念だ。



―――結論、しらたまさんに突きつけられた現実は残酷なものだった。