バアルの手紙(？/５)



契約悪魔は成長すると前線に出せると聞き、生意気な悪魔を肉壁にしてやろうと思ったら、あいつはあなたの姿に変身して、俺の手を握って殺さないでと笑いかけてきました。


もうだめです。俺は、もう、立っていられない。
あいつは俺になんの恨みがあるんでしょうか。他の顔にしろと掴みかかってみても逃げられ、懇願してもいやらしく笑って飛び去るだけでした。
俺は前線に立てるような防衛手段を持っていません。今の戦法は、いずれ限界が来ると思います。俺が死んでしまっては、あなたを助けられません。俺はあなたの命を背負って戦っています。(そのつもりでいさせてください。)ですから、あいつを前線に立たせる戦法は、避けて通れないのです。


これから俺は毎日あなたの顔をした悪魔が倒れるところを見ることになります。あなたの顔をした悪魔が、俺の壁として敵に打倒され消滅するところを繰り返し眺めなくてはならないのです。あなたが俺を庇って、死ぬところを、[この文はここで途切れている。]



先程も書いたように、俺が死んでしまってはあなたを助けられません。ですが、もう、このような仕打ちを受けるのであれば、このまま死んでしまいたいと感じるのを、止めることができないのです。現世と死後の世界の狭間で眠っているあなたを、揺り起こして連れて行けるのなら、それでもいいのではないか…そんなことを考える俺は、いつも叱ってくれるあなたには、どんな風に見えていますか？やはり、馬鹿なのでしょうか。

[この手紙は、他の手紙とは別の場所に隠され、そのまま発見されることはなかった。]