住人を蹴散らし、順調に研究棟を進むリナ達だったが…ある程度進んだところで、リナが突然足を止める。

「どーしたの、リナ？」

無邪気に尋ねるイーラだが、足を止めたリナの顔は至って真顔だ。

「………なんか、これ以上進むとやばそうな感じがするの」

「そ、そうですよね…一旦戻りましょう！」

研究棟の雰囲気に怯えきっていたエスカーラは、進む事を躊躇するリナに強く撤退を促す。

「ったく、あんたはここが怖いってだけで他に何も考えちゃいないだろうに。
…まあ、今までのエンブリオとひと味違う気配がするのはあたしも感じるけどさ」

エスカーラの様子に呆れつつも、フロルはこの先の不穏さを認めた。

「研究棟というくらいですから…何か変わった存在が生み出されている可能性は十分にありますね。
情報収集と、対策が必要でしょうか」

ルシェーナの言葉が、そのまま行動指針の結論となった。



　研究所から一時撤退したリナ達は、嘗て屋敷を見つけた山の、更に高みに足を運んでいた。
一揆に参戦する事で身体が鍛えられているのか、険しい山道を登るのも、以前ほど苦ではない。
そして…山頂に到達したリナ達は、その山が「星屑の山」と呼ばれる、その所以を目の当たりにする事になる。

「わあ、綺麗…！」

山頂には、星のように瞬く光が空から無数に降り注いでいたのだ。
星の光か…はたまた、研究棟との落差故か、空気も清々しく澄んでいるように感じられた。

「ここにはこれ以上は何もなさそうだけど…いい息抜きになったかし…ら？」

伸びをしつつそういうリナが、不意に固まる。
山岳はその環境故に、強い生物が多い…その事実を思い出させる気配が、複数近づいてきたのだ。

「…修行も覚悟してはいたけど…さっさと伸して、息抜き再開するわよ！」

リナは、戦闘態勢に入った。

笑いながら一旦ストップをかける。

笑っていたけれど少し真面目な顔になって。