『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.08.25.08:50、とある公園にて――


　二つの街道から、二人の奇妙な女性が歩いてくる。
舞踏会でもあるのかドレスと宝石で着飾った若い女性だった。
どちらも同じ容姿、同じ衣装の女性だった。異なるのは
色だった。右の街道からは、金髪に青い瞳、白いドレスの
女性が、左の街道からは、銀髪に赤い瞳、黒いドレスの
女性が歩いてくる。
　二人は一人となり、金髪の方の女性の姿を取った。


　待ち合わせの公園に早く着いたつもりだったが、
既に一人の女性が待っていた。
　電脳の世界で会った女性よりも年若い女性だった。
　15か16辺りだろうか。容姿は幼いが、あの女性の
面影はあった。色はプラチナブロンドの髪、
紫水晶の色の瞳、色白の肌をしていた。
服装は白いワンピースに黄色い花の装飾が付いた
白いキャベリンを被っており、右腕に籠バッグを
提げていた。
　待たせてしまったのだろうか。薄桃色の扇子を
扇いでいる。

　物陰から少女の様子を窺った。周囲に怪しい点は
見られない。一見すると普通の少女にしか見えない。
ついでに男性的感情は少女を可愛いと判断していた。
　人間は見かけによらないと言う。普通の少女に見えて
凄腕の技術者なのかも知れない。何かしらの組織に
所属しているのは違いないだろう。個人で……
一応は軍に所属のロボットになっている俺と
電脳の世界で会うなんて不可能だ。

　万が一に備えて戦闘の準備は整っている。
　少女に声をかけようとした時、少女と視線が合った。
暑さで弱っていた少女の表情がぱっと明るくなった。
電脳の世界での姿だけではなく、現実の姿も
知っていたようだ。俺を助けたのだから、
姿を知っているのは当然かも知れない。
「……君がパンドラ？」
　少女は大きく頷いた。
「はい、私がパンドラです。貴方はミライさん？」
「俺がミライだ。宜しく」
「こちらこそ」
　手を差し出すと、少女は握手を返した。綺麗で
柔らかな手だった。





　少し離れた長椅子にクリスは座っていた。
土産物の紙袋からはぽちが顔を覗かせている。
クリスは携帯端末を弄りながら、様子を見守っていた。
「……ボク、お土産のお菓子レベルなの？」
「そのままでは目立つからな。仕方ないだろ。
それよりも、あの少女の名を聞いたか？」
「聞いた」
「まさか、あのパンドラか？　俺達が相手している
害獣共の親玉に名付けた名か？」
「……それって敵じゃん！」