(※今回は番外編的な位置づけになります。
　 ENo.281 猫の鴨と葱さんのサブキャラをレンタルさせて頂いております。
　 試験的に絵を同封しました。
　 プロフ絵の方もこの日記にあわせたものですので、
　 あわせてお楽しみ下さい。)

「夏が終わるわねぇ。
　――全く元の世界での時間の歩みはほとんどないとはいえ、
　こちらの世界の季節と時の移ろいは早いわ。
　とはいえ……
　折角の夏だというのに海にいけなかったのが心残りかしら。
　まぁ、最もこの世界で楽しめそうな海はまだ見てないのだけども。」
そうぼやきながら、
のんびりしていると、
不意に携帯にメールが届いた。
内容を読んでみると、
どうやら、先日手助けした一件のお礼に、
リゾートホテルにご招待をしてくれるらしい。
丁寧にもプールもあるらしく、
楽しんで来るといいとの事。
更に、
一人ではつまらないだろうという事で、
一緒に楽しむ相手まで用意してくれたらしい。
場所への案内その他もしてくれると、
まぁ……
まさに至れり尽くせりの状況とお話を、
私は逃すつもりはなく、
喜んで招待される旨を返信する。
ついでに、
また何かあって必要な時は力を貸すことも約束して。
返信して暫く待っていると、
金色の髪の男が私の方にやってきた。
何やら不機嫌そうな顔をしているが、
いつもの事なので気にしない。
しかし、態々彼をよこしてくるとは、
先方も実によく分かっていらっしゃる。
「出迎えご苦労様、案内の方よろしくね。
　楽しく遊びましょう？
　朔位さん。」
「……此方の用件が分かっておられるようで何より。
　貴女の案内、供応役として、
　勤めさせて頂きます。」
「別にかしこまらなくても、
　いつも通りの対応でいいからね？
　お互い精一杯楽しまなくちゃ損でしょ？」
「……別に普段通りのつもりですが。
　そうですね。
　別にかしこまるつもりはありませんので、
　お気になさらず。」
貴女がいないほうが楽しめるし、
骨休めになるんですけどね。
と、そんな言葉が彼から聞こえてきそうだが、
私の知った事ではない。
「それで、キチンと用意は済ませましたか？
　水着の用意とかも。
　向こうで買う事も出来るでしょうが、
　サイズがあるとは限りませんよ。」
「大丈夫、用意してあるけど、
　朔位さんの方はきちんともってきたの？
　なんとなく、
　貴女と泳ぐつもりはありませんだの、
　泳ぐのは得意ではありませんだの返ってきそうだけど。」
「……
　そうしたいのは山々ではありますが、
　もたされていますよ。
　こちらはこちらで適当に楽しみますので、
　出来ればほっといて欲しい所ですが……」
「させるわけないじゃない。」
間髪いれずに口を挟む私。
態々来てくれたのに、
一人で遊ぶだなんてもったいない。
束縛するつもりはないけど、
ある程度は私を楽しませてもらわないと。
そんな私の言葉に言うと思ったとばかりに、
少し顔をしかめて、
「……
　ですので、
　楽しめる範囲で楽しむ事にします。
　……しかし、妙な水着ではないでしょうね？」
スルーして斬り返してくる辺り、
朔位さんは流石だと思う。
「妙なって？」
「貴女の事ですから、
　妙に露出の高い水着とか用意してそうなので……」
「心配しないでも学校指定のスクール水着よ？
　まぁ、露出の高い水着でもよかったのだけど、ね。
　生憎丁度もってたのがこれくらいだったのよ。」
「……貴女もやはり学生というか、
　相応の所があるのですね。」
以外とばかりに驚く朔位さんを見れて満足する。
別に彼を驚かす為というわけではないが、
それでも驚かせられたというのはとても楽しいし、
嬉しい事ではある。
素っ気無い態度が彼には多いのだから。
もっとも、
だからこそたまに見せるそうでない側面が私にとってとても好ましいのだが。
「ふふ。まぁ、学生ですもの。
　ま、早速いきましょ？
　ついてからゆっくりの方がいいでしょ。
　あ。そういえば部屋は……」
「さぁ？
　向こうで用意しておくとしか聞いてませんから。
　ついて荷物をおいたらプールでいいですね？」
「……そうね。」
「なんですか、その含み笑いは。
　……行きますよ。」
くるりと背を向け歩き出した朔位さんの後についてゆく私。
彼はきっとだ気付いていないのだろう。
もっとも、
私の想像があっているとは限らないが、
間違いなく同室をあてがってくる事を。

――目的のリゾートホテルについてみると、
風光明媚な海の傍に立てられた、
高そうなホテルである事が分かった。
南の方にあるらしく。
まだまだ暑く夏という感じが残っている。
なんというか、
対価としては破格な気がするが、
向こうの事情を考えてみると、
向こうからすればたかが知れてるレベルなのだろう。
ひょっとしたら、
私が驚くとか恐縮するとか考えたりも僅かにしたのかもしれない。
もっとも、
だとしても望みは薄いから、
もしそうなったらいいなぁくらいだろうけど。
内装もとても綺麗で、
スタッフの対応も良い。
そして、
私はお姫様気分でチェックインから何から何まで朔位さん任せ。
いいわねぇ。
この至れり尽くせり感。
精一杯楽しんでいるし、
後でどういおうかとニヤニヤしながら朔位さんの方をみていると、
早速何かもめているようだった。
内容は分からないが、
別の部屋にしろといって、
無理ですとでもいわれているのだろう。
さもありなん。
どうしてそうなっているのか、
彼も気付いてはいるのだろう。
もめごとはそう長く続かず、
舌打ちをしてこちらに戻って来た。
「座ってないで部屋に移動行きますよ。」
「結局貴方と同じ部屋に泊まるという事でいいのかしら？」
「…………」
「こんな絶好の機会に一緒の部屋以外にならない訳がないじゃない。」
「……貴女は……
　いえ、今更でしたね。」
頭が痛いとばかりにため息をつく彼に先んずるように移動して
ベルスタッフについて行き、
部屋に到着する。
案内された部屋に荷物を置いて見渡すと、
窓から綺麗な海が見え、
ゆったりとした空間――
そういえば、
こういう素敵なホテルで一夜過ごすというのは初めてかもしれない。
今でこそ眠って過ごせるように出来る期間が作れるようになったものの、
基本的に私はこういう場所で眠る事は出来なかったから。
思わず晴れやかな笑顔になるのも仕方ない事だと思う。
「……いいわねぇ。」
「お気に召していただいて何より。
　まぁ、ここで何もせずゆっくりとというのも勿体無いですし、
　プールの方へ行きましょう。
　用意は出来ているんですよね？」
「そうね。行きましょうか。
　勿論出来てるわよ。」
早く終わらせるべき事を終わらせて、
それからのんびりしようとか思ってるんだろうなぁと思いつつ、
プールへ行く用意をすませて二人で向かうと、
外の景色を楽しみながら、
ゆったり出来る空間も在る広いプールだったりする辺り、
本当に高級なホテルだと感心してしまう。
とりあえず、お互い着替えてから落ち合うよう約束して、
早速スクール水着に着替えて、
お待たせとばかりに笑顔を浮かべて更衣室から出てきたのだが……



「みっともないから止めろ脱げ。」
第一声がこれである。
「あら、
　露出控えめで一番真っ当な水着だと思うのだけど、
　何かお気に召さなかったかしら？
　みっともないっていうけど、
　学校指定のきちんとした水着だけど。」
なので、にっこり笑いながら反論する。
すると、
少し顔を赤くしつつぐぬぅと苦虫を噛み潰したような顔をしながら、
「致命的に似合わないから止めろ。
　普通の水着だと思った私が悪かった。
　金は出すから適当な水着を買って来い。」
「あら、そう？」
「……ついでにいうと、
　可愛い系の水着もやめてくれ。
　同じような惨状が見て取れる。」
「はいはい。分かりました。
　それじゃあ、適当に見繕ってくるわ。
　きちんと似合いそうなの選ぶから安心なさい。
　――我侭なんだから。」
「なっ……！！」
何か言う前に、
クスリと笑ってその場を背にして立ち去り、
着替えなおしてから、
売店で水着を見繕う。
色々な水着があるが、
スクール水着であんな反応をされた以上、
普通の水着でも何かしらいわれるだろうので、
黒系の露出の高めの水着を選ぶ。
白だとか明るい色は基本的に私に合わないというか、
そんな柄ではないだろうとかいわれるに決まってるし、
その反応を楽しむのも悪くはないけど、
からかうだけで時間が過ぎ去るから、
すぱっとストレートに大丈夫そうな水着を選ぶのが無難だろう、
との判断である。
態々露出が高めにしたのは、
まぁ、ささやかな嫌がらせというか、
からかう為であるのはいうまでも無い。
ともあれ、
水着を購入したので、
再び着替えて朔位さんの元へ。
「お待たせ。悪いわね。
　違う水着を着てきたわよ。(※プロフ参照。９月半ば頃まで)」
「…………
　そうくるんじゃないか、とは思っていましたが……
　やはりというかなんというか……」
「下手な水着ならスクール水着と大差ないわ。
　それにこれなら間違いなく私に似合うと思うし、
　許容範囲でしょ。
　男の子なんだから目の保養とでも思えば？」
「貴女がいわないで下さい。
　仮にも女性なんですから、
　もっと慎み深さ……」
なぜかそこまでいって言いよどむ彼に、
私はニヤリと笑って告げる。
「私にそういうの期待するほうが無駄よ。
　まぁ、そういう風に振舞う事もできるけど、
　私がそういうタイプじゃないって知ってる貴方にとっては、
　きっと逆に気持ち悪いと思うわよ？」
「……それもそうですね。
　気にしない事にしておきます。」
ふぅ、とため息をつく朔位さんの姿は絵になる。
つっけんどんで、
あまり感情を大きく表さない彼だが、
よく観察すれば、
よく彼の事をしれば、
思った以上に表情が豊かで素直なのに気付かされる。
だからこそ、
最高に面白く、
そして、
信頼も出来るし、
頼りにもなる。
流石に、こんな人物を手放す事が出来るとすれば、
私が身を固めて落ち着くことがあれば……
だろう。
その対象が彼なら逃すつもりは絶対にないが。
「ま、それじゃあ、サンオイル塗って日焼けしたいから、
　オイルを塗ってくれるといいたいけど……
　ゆっくり泳いで楽しみましょうか。
　疲れたらのんびりジュースを飲みながら休憩……
　って辺りでいいんじゃない？」
「――塗らされる事にならずに結構。
　そうですね。
　その辺りで良いでしょう。
　先に上がったりするかもしれませんが、
　その時はご了承願いたいものですが。」
「別にいいわよ。
　どれだけ楽しむかは個人差があるもの。
　――貴方なりに楽しみはするんでしょう？」
「ええ、
　私は私なりに。
　あわせるというなら御自由にどうぞ。」
「あら、寛大ね。」
あわせるつもりはないが、
楽しむ余地はある。
後はどうするかもまた自由。
まぁ、私達にはこれが一番あった形なのだから、
丁度良い。
ゆったりと泳いで水に浮いたりしながら時間を過ごし、
朔位さんにあわせて行動する。
あわせるのに問題はない。
十分共に過ごす時間は楽しいのだから。
あわせた事に対して、
「もっと遊んでいてもいいのですよ？」
といわれたが、
「十分遊んだし、一緒の方が楽しいわよ？」
といつもどおりに返す。
いつもと変わりないが、
それでいい、
平和な日常というものは、
どこへいってもそんなものなのだから。
「ああ、そういえば……
　夕食もこのホテル内で食べるのよね？
　一体どんなものがあるのかしら？」
「和食、といいたい所ですが、
　流石にこのホテルの雰囲気とはそぐいませんね。
　……希望はありますか？」
「フレンチで夜景を見ながら、
　優雅にデート気分なんかもいいかもしれないわね。」
クスクス笑いながら告げる。
ここで普段なら嫌そうな顔をして、
望みと在れば構いませんが、
デートにするつもりはないと返してくるだろうので、
適当な所で妥協しようと思ったら……
「……まぁ、男女が二人でとなると、
　デートといわれてもしょうがありませんが、
　趣味がいいのか悪いのか。
　どう反応したものやら困りますね。
　まぁ、たまには良いでしょう。」
と思ったよりも好反応がかえってきたので思わず動きが止まった。
「……どうしました？」
「ああ、いえ。
　珍しく普通にオッケーが出たわねと思って。」
「……今は特別です。
　というか否定出来ない状況なだけともいいますが。
　それだけの事です。」
全くもって珍しい、が。
……折角の好意なのだから甘えないと損、
そう思って残りの時間を楽しんだ。
何をどのように楽しんだのかは……
折角だから、
私と彼だけの秘密――
という事にしておきましょうか――