「だから言うたじゃろう？」

耳元で槿花の声が聞こえ、私は伏せていた目を開いた。
夜の空気、水が流れる音、揺れる明かり、ずきずきと身体中を襲う痛み。
あの庭師に挑んだ結果、槿花の言葉通りに敗北した私は水辺で目を覚ました。
負けたところまでは覚えている、けれど果たしていつ気を失ったのか――どうやら槿花が此処まで運んできてくれたようだが。
今回、共にあの庭師と戦った時風はまだ回復しきっていないらしく、呼びかけてみても反応がなかった。

「全く、折角忠告してやったというのに」
「……強い相手と聞けば戦いたくなるのが、私ですから」
「それで殺されたらどうするんじゃ。このたわけが」

びしっと小さな手で頭を叩かれ、思わず呻き声が出た。
どんな力をしているのだろう、思った以上に痛い。
軋む身体を動かして叩かれた箇所をさすっていると、槿花が深い溜息をついた。

「……まさか主様がこんな無謀な人間じゃったとは……全く……」
「……」
「とりあえず、今は身体をしっかり休めて……もし活動するのなら回復しきってから活動しい」

溜息混じりの槿花の声に、今は頷くしかなかった。