「それにしても、こんだけ手入れされた庭園にもやっぱ色んな奴がいるんだな。」


グリーンパレスをあるくみちすがら、ぽつりとししょーがもらしました。


「エンブリオ等でしたら、至る所にいると考えても良いでしょうね。何しろ王の居城ですから。」


セバスチャンもあたりをけいかいしながらこたえます。


「うん、いろんなにおいがするよっ！！」


すんすん、とはなをならしてこたえたのがシュテルン。


「良く知らねェんだが、王城って普通こういうモンなのか？」


「いえ、他と比較すれば特殊な例だと思いますよ。」


「だよな。」


そんなとりとめのないかいわをしながらすすんでいきます。


そんななか、猫はひたすらなにもいわずにあるいていきます。

ししょーやセバスチャンがあえてべつのわだいをしてきをまぎらわそうとしてくれたり、ときおりシュテルンが猫をみあげているのはわかっていました。

そんなやさしいかれらにしんぱいはかけたくありません。



いまはただ、うまくいくよういのってすすむのみ。

そう言ってココは懐から煎餅を取り出し、食べ始めた

自分は、自分。大切なともだちだなんて言ってくれる黒猫に、
そういう所、やさしいね、とおずおず笑った。――にんげんみたい、とも小さく笑い。

えへんぷいと子供のように胸を張って、ひみつひみつと同じようにウィンクひとつ――

―――出来なかった。
初めてのウィンクは上手くいかず、ぎゅっと両目を思いっきり瞑ってしまった。
むつかしい、と耳をしおしおと項垂れて、それでもいつか――小さな猫が、大事な人に、声を届けられますようにと仕舞う様子をじっと見つめた。

はしゃぐ様子にこちらも同じ。思わず妙な鳴き声？みたいなものを零して耳をぱたぱた。
それじゃ、おはなしするねとこほんと咳払いする。

ずっとずっと前、キーはたくさん「おやくめ」をしてたけど、ある時ちょっぴりさぼって森の中に逃げ込んだの、と、りゅうは言った。
生まれたばかり、おやくめばかりで楽しい事があんまりなかったから。
キーエは助けてくれないし、と拗ねたように鼻先を尖らせて。

けれど、誰も来ないと思っていた森の中で、一人の小さな子供と出会ったと、言った。
でも、

そこまで言うとロクをじっと見つめ、へにゃりと笑った。
でも、逃げて。おやくめからも逃げて。
そんな事許されるはずもなく、とぼとぼと戻っていったらやっぱり同じ子供に出会ったとりゅうは言った。
――けれど。

時間感覚のズレがあの頃ひどかったぁなんて笑いながら、思い出話にどうも感想と、ロクへ話しかけてしまうので遅々として話は進まない。
けれど、自分の事と一緒にロクの事をひとつひとつ知っていける気がして、それになんとなく楽しくて、りゅうは焦って話す事をしなかった。

時間感覚が人間と違うね、びっくり！と他人事に笑ったりして。

にんげんって不思議だよね――と、一旦りゅうは言葉を切った。