機会を伺うように、グッと姿勢を低くする。
その姿は、さながら海に飛び込む海鳥か、あるいは銛撃ちが構える銛か。

大きく蜻蛉を切り、逆手に持った銛の根元をしっかりと掴む。
銛を持つ手を目線の高さまで持ち上げて、腰を落とすはどこまでも。

そしてイルカのように高く高く飛びあがり、打ち下ろすように銛を撃つ！

それは鯨のような巨大生物を倒すために編み出された技法。
銛撃ちに伝わる、ただの一投によって臓腑を引き裂く妙技――――！

――――既にこの身は満身創痍。
血反吐を吐き、肉は裂け、骨は悲鳴をあげている。

――力の差がありすぎる/それがどうした
――傷が深すぎる/些細なことだ
――これ以上は無謀だ/そんなことはどうでもいい

――こんな強大な敵に、人が勝てるのか？

――――それこそ、自分の生業だった――――――！

銛の根元を掴む。
右利きの自分が、左手で、だ。
なぜそんなことをするかと言えば、これから放つ技は足を使うからだ。
義足では放てない。
だから右半身では放てない。
左足で銛の石突を捉える。
姿勢は限りなく低く、前に倒れんばかりに。

手は砲身。足は爆薬。銛は砲弾。
銛を足で射出する。
口で言えばただそれだけ。
しかしその威力は、巨大な鯨を屠って余りある。
身体を一つの兵器に変えて、巨躯を屠るためだけに生まれた絶技を放つ――――！