[バアルの手紙　2/5]


先日やっとそれらしい戦いをしました。使役していた悪魔が強く、すぐに終わってしまったのですが。

悪魔が悪魔を使役するなんて、おかしな話ですね。なんだか俺に顔が似ていて気持ち悪い奴です。それに、自分の名をベリトと名乗りました。どこで探ってきたのかと問いかけましたが、反応がなく、今もイライラさせられています。自分に似た悪魔を自分の別の名で呼ぶのは御免なので、今も悪魔と呼び続けていますが、他の悪魔と契約した時なにか支障が出るでしょうか。今から一抹の不安を覚えています。


俺は今、花がたくさん咲いている広間に居るのですが、なんとなくあなたの家のあの場所に似ています。縁側、だったと思います。良く日が当たって、花の香りがして、狭いけれど暖かくて心地のいい空間でしたね。けれど、やはり少し違うと思わされるのは、あなたがいないからでしょうか。

ここに咲いている桃色の花は、あなたの黒髪によく似合うと思います。あなたが隣にいたら、俺はきっとあなたにこの花を何本も手渡していたと思います。あなたが、花を手折ってしまうやつなんて嫌いだと言うところが目に浮かぶようです。俺も、前まではそう思っていました。でも、自分は花を折らずに自分のものにする方法を知りません。悪魔だからと言いきってしまっても、悲しいと思わずにいられません。ですから、俺がその行為を認めてやらないと、俺は俺をもっともっと嫌いになってしまって、立ち直れなくなってしまうと思うのです。


ましてやあなたという花を、手折るでもなくただ散らしてしまいそうにな―――