「イチジクって、意外と根に持つね？ぼく知らなかったよ〜。」

九はむすっとした表情で場所を移動する。

「もう、イチジクってば！あのねー、いくら気の長いぼくだってね…ぼくだって…」

拳を握り振り上げる。

「負けないもん！ぼくはもっと気が長いんだからねっ！」

まだまだイチジクの頑固につきあうからねっと何故か闘志を燃やすねこっぱちにを無言で押しのけ、サクサク歩く。

「あ、でも（めんどくさいから）できるだけ早く機嫌直して欲しいなぁ。ぼくたちにはこんなことしてる時間が勿体無いんだからさぁっ。」
「……なんでだよ。」

ブツブツつぶやいていたねこっぱちに、九がぶっきらぼうに返事を返す。

「なんで時間ないの？」
「なんでって……そりゃ…」

途端もにょもにょするねこっぱちに、九はイライラを隠せない。

「ほら〜、そろそろボーナスの時期でしょ。一生懸命契約取らないとねぇ…」
「おまえさ、ほんっとムカつくんだよ。思わせぶりなこと言いやがってさ！」

オレの事振り回して楽しむなよ、と九は鼻の頭にシワを寄せる。

「本当なら今頃こんなバカ猫とおさらばできてたのに……」
「無理無理〜！イチジクはぼくから離れられないよ。」

だってぼくたちコンビでしょ、と言うと、九はもうそれ飽きたとぞんざいに返す。

「それに、だからって、なんでオレの事をおまえが決めるんだよ。コンビ解消する権利あるだろ！」
「無い無い〜！イチジクがなんと言おうと、ぼくたちは一蓮托生だもん。」
「だーかーらーっ！！」
「だってさ！」

ねこっぱちは胸をそらす。

「こんな可愛いイチジクをぼくが放っておけるわけがないでしょ〜っ！」
「オレの方が可愛いっつってんだろ！！！」

反射的に張り合ってしまう。
ねこっぱちが笑う。

「そう言ってるじゃん。」
「だから、オレの方が……んん？？？」

イチジクの周りに無数のハテナマークが浮かんでは消える。
ねこっぱちはニマニマしながら、九の周りをぐるぐる飛んでいる。

「ふふふ……ホント、イチジク可愛いなぁ〜♪」
「？？？！！？？」


鼻歌を交じえながら可愛いを連発するねこっぱちに、九の混乱は日がくれるまで続いた……。