『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの短編〜』



　とある世界、日付不明、とある場所にて――


　一応は構造を把握しているつもりだ。
　設計図を見ると、細かな所にも配慮が行き届いており、
改めて博士への感謝の気持ちが湧いてくる。
「……よし」
　自身の設計図と自作した設計図を見比べながら、
これなら出来ると確信した。


　辺境の惑星に出て来そうな怪獣をデフォルメにした
ロボットは完成した。背中には無骨な鉄の翼が生えている。
「……何コレ？　鉄で出来た人形？」
　ロボットを翼でぺちぺちと叩きながら、ぽちが聞いた。
「何って？　俺が作った怪獣っぽいロボットだ」
「ロボットぉ？」
　ぽちは訝しそうな視線を俺に向けた。
「ぬいぐるみとか、人形じゃないぞ。ちゃんと……
動く。ミスがなければ、動く筈だ」
　怪獣のスイッチを入れる。
「きゅぃ〜、きゅい、きゅい」
　怪獣は瞬きをし、首を左右に振った。周囲を認識している。
「おお〜、凄いね。動いたよ！」
　ぽいは興奮した様子で瞳にきらきら輝く星を出した。
珍しく興奮しているようだ。
「お馬鹿だと思っていたけど、君って意外と凄いんだね。
ロボットが作れるなんて、君のことを見直しちゃった」
「少しは見直したか。ロボットがロボットを理解するために、
自分で作ってみたかったのさ」
「うん、少しは……」
　がりっ。金属を引っ掻く音が響く。
「……いや、前言撤回かな。凄く痛いんですけど！？」
　怪獣はぽちの後頭部に噛みついていた。敵と判断したらしい。
金属の歯が、ぽちの金属の身体をがりがりと引っ掻いていた。
「きゅぃ〜？」
「ボクは餌じゃないぞ！　きゅい怪獣め！」
　ぽちはするりと抜け出して、怪獣の頭をぺちぺち叩いた。
ぽちの装甲の表面に引っ掻いた傷が出来上がっていた。
「きゅ？」
　きゅいも負けじと翼に噛みつく。
「お？　おおお？」
「きゅ〜い」
　怪獣はぽちの翼を捕らえたまま、首を大きく回転させた。
「あ！　ぽち！」
「きゃ〜！？」
　ぽちは開きっぱなしの窓へと投げ捨てられ、何処かへ
飛んでいった。いくつもの建物を飛び越え、星となって消える。
「きゅ」
　怪獣は俺の方へ向き直ると、胸を張ってピースした。
「……うん、よく頑張った、でも、あれ君の仲間だからね」
　俺は怪獣の頭を撫でてやった。嬉しそうにすり寄ってくる。
　一回で完成とは思っていなかったが、完成にはまだほど
遠いようだ。

　怪獣……きゅいは後にグローリア博士によって
改良されるのだった。

　　　　　　　　　　天を見上げて死んだ、最初の人間。