ミズリィがいなくなったのは霧の立ち込める朝の出来事だった。いつものようにテントの中で目覚めると、隣に寝ていたはずのミズリィの姿が無かった。毛布は無造作にめくれていて、まるで飛び起きたまま帰ってきていないようだった。

　起きて毛布を畳み、しばらく周辺を見回る。だが、ミズリィの気配すら感じられなかった。神出鬼没な悪霊同様に、ミズリィも消えてしまったのだろうか。2時間ほど待ったがやはり現れず、そのまま旅を再開した。

（悪霊も、シュルケーも、ミズリィも、何故皆同時には存在できないのだろうか……変な魔法だ。次に来るのは、悪霊か、シュルケーか。いずれにせよ、その辺はもう少し調査してみたいな）

　一行は森の中を進撃していた。見えてきたのは奇妙な建物だ。情報によると、研究棟と呼ぶらしい。あそこでまた新たな出会いがあるかもしれない。新たな出会いに備えて、エルはプレゼントを用意した。

　小さな箱だ。黄色い5センチ四方の立方体で、金具で蓋が閉められている。実はこれはびっくり箱だ。中身は開けてのお楽しみ。悪霊でもシュルケーでも、楽しいリアクションが期待できそうだ。

　しかしこれからエルが出会うこととなるのは、悪霊でもシュルケーでもなかった。

ミケが頭上であたふたしている