夢の中で何時もと同じように、燃え盛る村の中を私は走る。

脳の隅ではまたこの夢、いや過去の中かとか今回は感覚が短いなとかボーっと過去を見ている自分と、今まさに燃え崩れる屋根の下を潜り抜けて生と死の境を走りながらパニック状態になっている自分。
結末を知っている自分は早くその時が来ないかと思うが、今火に炙られてる自分はそうはいかない。
燃え盛る壁の間を走り抜けて倒れる支柱をなんとか避けて舞い続ける火の粉を浴びながら走り続ける。
この部分の順序は何時も曖昧だ。だけど訪れる場面は何時も決まっている。死神の手から死に物狂いで逃げれた瞬間達だ。
もしこの再生される場面のどれか一つでも逃れられなかったらあの結末はなかっただろう。
ただ、時折考える。死神はわざと自分の魂を取らなかったのではないのだろうか、と。
もしかしたら、別の場所にーーーそう、別のーーー


そこまで考えて、思考が結末に塗りつぶされる。
伸ばした手に触れる、微かな感覚。
それが、その時だけは、私の全てだ。


木の扉をノックする音に、目が覚める。
絡みつく過去を瞬き一つで振り払い視線を巡らすがまだ深夜だ。
この時間のノックなど、碌な理由でもないだろう。
部屋の間違いじゃないかと時間を置いて確かめるついでに、隣のベッドを見るが…暗闇の中布団は膨れている。
が、あの膨らみ方はお嬢様は居ないようだ。その変わりに上半身を起こして耳を巡らすシュユの姿が見える。
敵意があるならシュユが唸るはずだがそれがないということは、少なくとも野盗やその類ではないのだろう…
物音を立てないように扉に近づき、そっと向こうの気配を探りながら、シュユの方を見ると。先ほどと同じようにこちらを見ていた。
そのことに違和感を感じるが…相手のノック音が聞こえた瞬間に扉を開く。
まず目に入ったのは、見慣れた髪。
そしてその人を抱きかかえる見知らぬ男。
その男の少し驚いた顔を見た瞬間には、自然と長恨を抜き放っていた。


打ちながら更新してるので切れたら次回に続く

木で作られた台に乗って、踊りながら歌っている女の子がいる
１曲歌い終わると、ちらほらいる観客に向かって話しかけ始めた