竹林である。

　謎の竹林。
　ある日、忽然と其処に現れ、迷い込むことでのみ踏み入ることができる。
　一度でも入れば、その後はいつなんときでも、願うだけで出入りできるようになる。

　聳える竹を両脇に、石畳の路を進んだ深部、開けた景色の中にぽつんと佇む一軒の古めかしい屋敷。
　ある者には懐かしく、ある者には異国情緒に満ちて見えるという。
　周辺には、竹垣に囲まれた庭、畑、その他様々なものが見てとれる。
　奥の間にだけは立ち入りできぬ空間が広がっているが、それ以外の場所への往来と利用には何の苦もない。

　――出現の時、場所、遭遇する相手。
　それらには、何の規則性もない。
　故知であろうが、なかろうが。
　何処に居ようが、居まいが。
　……目の前に、この竹林が現れたならば。
　誰彼構わず、出会い、迷い込むことができる。
　――これを目にする者は、誰であっても。

　ひとときの憩いに。
　仮の棲家として。
　幾らかの気配が、竹に囲まれた隠れ家を訪れる……

　……余談。
　設立者が、一揆中の拠点用に迷いの森的な隠れ家の生成を試み、呪文(ソースコード)の記述を一部間違え、木が竹になってしまったのが真相らしい。
　生成者当人以外、誰でも入れるようになっているのも、恐らくは、何か記述が間違っていたせいであろう……

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【photo credit】
　[photolibrary] http://www.photolibrary.jp/ より
　作品名≪竹林の小径ライトアップ≫

（ゼゼ達の竹の加工を手伝っている）

＞闇じぇろ

（もし食べかけだとしても、強く止めない限り
さっさと片付けてしまうだろう）

＞ハノじぇろ

（と言っているが、湿気のせいでいつもよりヘタっている）

　竹を撫でる様に鉈を動かし、広がる枝を落としていく。
　枝が取り払いひょろ長い幹だけになったなら、適度な長さを測量し、鋸を引いて切断する。
　長さに分けて切りそろえたならば、今度はそれらを真っ二つに割断する。竹の目に対し逆らわずに刃を入れれば、これは存外簡単な作業だ。
　あとは蓋になってしまう節目をくり貫けば、水とそうめんを通す道は出来る。
　案外どうにかなりそうだ。そう思った折である。

　どこかで測量を誤ったらしい。だが素材は豊富にある。一つずつ、確実に仕上げていこう。　

わしゃわしゃ撫でられると頭を左右に振って
どうしたんだ？と瞬きをして