カエル型のエンブリオを捕まえるため、エルたちはさらに水辺の奥深くへと侵攻を継続していた。国王軍の侵攻は目立って展開されていないため、各地に駐留しているモンスターのような国王の手下を奇襲して無力化している。そんな戦闘が続いていた。

「しかしまぁその悪霊？　私にそっくりで、いたずらしてくるなんて困っちゃうね。私への印象が悪くなっちゃうじゃない」

「ミズリィのインパクトが大きすぎてもうイメージは塗り変わっちゃったよ……」

　突然現れた悪霊そっくりの女子高生、ミズリィ。彼女は例のいたずら好きな悪霊のことを全く知らないようだった。しかし全く関係ないというわけではないだろう。背格好や顔つきが全く一緒なのだ。偶然だったら運命の神様には脚本の才能は無いだろう。

「でまぁ、彼女は……悪霊は急に熱を出したり風邪ひいたりして、その後突然消えたりすることがあったんだ。不思議な話だろう？」

　ミズリィは靴を脱いで、浅瀬を裸足でぴちゃぴちゃと歩いている。いつの間にか水辺は蒸し暑く、エルの額には汗がにじんでいた。

「それはきっと……恋の病ね〜〜〜〜！！！」

　目をキラキラさせてキャッキャッと喜ぶミズリィ。ミズリィのテンションの高さはいつまでたっても慣れないものだった。
　エルは特に返答もせず食事の用意を開始した。以前素材に使えると思って買っておいたたくあんが不要になったので食べてしまうのだ。
　たくあんに魔法をかけると、黄色い色をしたご飯の塊になった。ターメリックライスを思い浮かべてほしい。微かにたくあんの匂いがする。

「おおお！　魔法！　魔法だー！」

「料理の魔法じゃなくて見栄えを変えるだけの魔法だけどねー。味はたくあんご飯って感じだよ。ミズリィも食べなよ」

「いただきまーす！」

「そういえば悪霊はたくあんが苦手だったなぁ、しょっぱいものがダメだったらしいけど、何だったんだろう、なぁミズリィ……」

　ここでエルは異常に気付いた。たくあんご飯を食べたミズリィが……黄色い泡を吹いて倒れたのだ！