『行き当たりばったりな冒険　〜ツルギの場合〜』



　とある世界、GC2075.08.18.10:34、とある廃都にて――


　本日の任務、人類の害となる生物の殲滅。


　ぽちの翼の切り込みが白く光った。両方の翼の先端から
白い光が伸び、六枚の光輝く羽根となった。
「え〜んじぇ〜る〜すぅらぁ〜っしゅ〜ぅっ！！」
　適当に格好良く決めたという必殺技名と共に、ぽちは
自身の頭身の三倍程の長さとなった翼を振り下ろした。
格好良さを演出するために無駄に光の粒子を散布させながら。
「とうっ！」
　空中でくるりと回転しながら、敵の後方へ着地する。
着地と同時に光の羽根……レーザーの刃は先端からすっと消え、
敵は閃光に包まれて爆発した。ぽちが投げ落とした爆弾が
時間差で爆発したのだ。
　無駄な演出が多いが、これがぽちの攻撃の基本である。最後の
爆発は演出ではなく、必要な攻撃であるが、ぽちの演出と
合わさって、無駄な演出がより過剰な演出に見えた。

　炎に包まれて消えていく敵を確認する。過剰な攻撃にも見えるが、
繁殖、細菌等による被害を未然に防ぐための行動だ。
「ウイルス等は感知されないね。一個目の殲滅任務完了だよ〜」
　丁度、俺の方も決着がついたところだった。火の後始末をして
一つ目の任務を完了する。
「こっちも終わったところだ。一旦、帰還するぞ」
「およ？　続けて行かないの〜？」
「遠いからな。水を切らせた。補給がしたい。次の任務は
午後でも問題ないだろ」
「植物性で動き無し。有毒だけど、その場所に
根付くタイプみたい。補給に戻っても問題はないと思う。
場所的に心配ないと思うけど……」
「思うけど？」
　ぽちの丸い目が険しい目に変わる。
「……君、ちゃんと補給してこなかったのかい？　今日の戦いは
始まったばかりだよ？　マスターが検診中だからって、
だらけちゃいないよね？」
「そんなわけないだろ。俺はマスターに認めてもらう為なら、
どんな戦場だって赴くさ」
　ぽちの頭上に電球の立体映像が現れ、数回の点滅を繰り返して
消えた。
「ははぁ、そういうことですな。ボク達が帰還する頃には
グローリア博士が居る確率が高い。彼女に会いたいのですなっ！」
「まだ誤解しているのか。俺はそんなつもりじゃないよ」
「そういうことにしておきましょう」
　ぽちはくすくすと笑う。
「だけど、注意した方がいいよ。グローリア博士の側には
『でぃい』さんが付いているからね」
「は？　『でぃい』さん？　誰だよ？」