その術式の開発は人類種を一つ増やした。
そう言われた開発がある。
『具現化精霊』と呼ばれる、日々の生活をサポートする『自立行動を行う人形』である。

庭園の片隅、四角く区切られた場所で唸っている彼女こそ、その開発者の一人である。
術式の四つある分類の一つ、『創造』のエキスパートである彼女は今、二つのエンブリオのデータを見比べていた。

以前から通称『召喚』と呼ばれる契約したエンブリオが戦闘行動を行うことに注目していたのだが、ウンディーネに現れた特異な兆候は、それ以降全く変化が無かった。
その代わりとでも言うように、強い兆候が現れたのはブラウニーと呼ばれるエンブリオである。

『召喚』のメカニズムが『具現化精霊』に近いと考えた彼女のは、今の状態をよりどれだけ自分が動かずに済むか、という間違った目的を達成するための一つとして考えていたのである。

あらゆる"力"を"解析"して"分解"し、扱いやすい術式という形に"再構築"するのがフェイの世界であり、彼女は既にエンブリオの力のいくつかを術式として再現することに成功している。
彼女にとって、エンブリオもそんな"再構築"するための材料の一つに過ぎない。

もしこれが完成したならば、と考えるだけで笑いがこぼれそうな彼女であるが、どれだけ動かず楽するかを考えている彼女がその『召喚』に成功するのはまだまだ先の話であった。