出自と容姿―――――――――――――
　海辺にある少華村出身の女。
　潮と陽に焼けて赤銅色の肌。
　赤銅色の肌を飾る黒髪も、色褪せている。
　目だけが深い黒色をしている。
　額から顎への傷は、かつて賊徒に負けたときの傷である。
　鉄糸を編み込んだ軍袍の上に、鎧を着る。

　性格と性質―――――――――――――
　父親とは異なり、人と協調することが苦手である。
　それゆえ、人が多いと黙っていることが多い。
　口数の少なさと表情の険しさ、顔の傷も孤独を手伝う。
　ただ、実際は不器用なだけで、知人と会えば、屈託ない。
　女ながら顔の傷を隠さないなど、外見に頓着しない。
　負っている責任や義務を阻害されると憤慨する。
　細部への拘りが強く、我慢強いため、戦いでは粘り強い。

　父親の存在―――――――――――――
　亡き父親に、幼少から騎兵、水兵としての鍛錬された。
　父親と同じように、民は民として生きよと考えている。
　毎日、怠けずに畑を耕し、魚を獲って暮らすことだ。
　そうした村の営みを守ることは、父から伝えられた。

　王の搾取は―――――――――――――
　王によるネクターの搾取は、少華村の民を害するか。
　村人は、新たにエンブリオと契約する術を失った。
　多くの村人が反発し、奪われた後は、消沈していた。
　だからなんだというのだろう。
　今いるエンブリオがあり、畑があり、海がある。
　生きていける。失ったのは、この先の豊かさだけだ。
　村人の落ち込みは、大袈裟にしか思えなかった。

　一揆軍参加―――――――――――――
　だが、王の行動には、分からないことが多く、不満だ。
　納得のいく説明はなかった。質す必要がある。
　エンブリオの力を集めることは、大変な脅威だ。
　王に害意あらば、ネクターを奪い還さねばならない。
　ただ、自ら方針を考え、人を率いることは苦手である。
　そのとき、一揆軍の報が届いた。
　気持ちの半分は、武を試したいというわがままである。

　武器の扱い―――――――――――――
　戟を扱う。
　戟は、横に出た刃が馬を傷つけるため、騎兵は扱わない。
　だが、シュシュリは馬上で極めて巧みに扱える。
　剣を扱うこともできる。長柄しか扱えぬは騎兵にあらず。

　騎兵と水兵―――――――――――――
　騎兵と水兵としての行動には、かなり厳格である。
　必ず、馬の世話をしてから自身が休憩すると決めている。
　どれだけ激しい戦いをした後でも、必ずである。
　馬は、騎兵の命であり、愛馬にかわる馬はいないためだ。
　愛馬雪嶺の世話をするときは、雪嶺と語り合う。
　口は開かないが、心を通わせる。
　また、毎日、武具、軍袍、および具足を必ず手入れする。
　水に濡れた装備は、特に念入りに整備する。

　料理の腕前―――――――――――――
　料理は雑にする。野菜を皮つきのまま切り、料理する。
　しかし、獣肉や魚を扱うことにかけては、非凡である。
　肉の切り方ひとつで味わいを変化させることができる。
　魚の肝の扱い方によって、鍋の味を変えることもできる。
　調味料をつくることにかけては、昔から父親を唸らせた。
　特に、生の獣肉を食うための黒いたれは、絶妙である。
　たれは一本の小さな竹筒の中で継ぎ足されて作られている。
　それゆえ、心を許したものにしか振舞わない。
　他、よく料理に使う香料を袋に入れて持ち歩いている。
　香料には種類があり、料理によって使い分ける。
　これらの香料に使う薬草や香辛料も選び抜かれている。
　なお、狩猟には、嗜みと言えるほどに習熟している。

　エンブリオ―――――――――――――
　第一は、来歴不明な、海の波間を漂う少女である。
　船を導くため、少華村の方言で船火児と呼ばれる。
　契約にあたり、船火児に海棠と名付けた。
　シュシュリとは異なり、白皙の美貌であるためだ。
　シュシュリとは、互いに海棠、秋嵐と呼び合う。
　また、シュシュリより更に口数が少ない。
　少女の頃からシュシュリと親しく、姉妹のようである。
　海棠は、今、シュシュリの血潮の中で生きている。
　シュシュリが死ねば、彼女の血潮で生きる海棠も死ぬ。
　それとは別に、海棠はシュシュリを深く愛している。

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